出版社内容情報
内容説明
希望はある、愛と大地と人びとのなかに。名著をもっと楽しく読むための入門書。
目次
1 『一九八四年』はどのようにして書かれたか(ジュラ島のオーウェル;『ヨーロッパで最後の人間』(仮題)の構想と執筆
『一九八四年』の刊行と出版直後の評価)
2 何を書いたのか(「窮乏の時代」とオセアニア国の表象;「ライター」、そして「X」と「Y」―ウィンストンとジュリアの愛、同志オブライエンの奇妙な愛情;春と独裁 ほか)
3 人の生をいかに捉えたのか(「権力の司祭」の信仰;「人間らしさ」と「人間性」(そして「動物性」)
「嘘」の暴露と美的経験)
著者等紹介
川端康雄[カワバタヤスオ]
日本女子大学文学部教授。英文学専攻。明治大学大学院文学研究科博士後期課程退学(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
アキ
121
「1984年」ジョージ・オーウェルの著作は、全体主義の警鐘を鳴らす時によく引き合いに出される。トランプが政権を取った2017年Amazonで一時ベストセラーとなるなど発行され70年経過しても未だ色褪せない影響力である。しかし本書をオーウェルの手紙や手記から紐解くと、政治的に利用しやすく意図した部分や、レベッカ・ソルニットが「オーウェルの薔薇」で紹介した英国の田園の美的な部分も感じとれる。題名を当初「ヨーロッパの最後の男」と考えていたが、manとは人間なのか?「動物農場」にも言及し、知的好奇心が刺激される。2023/05/08
パトラッシュ
97
各国で勢力を広げるナショナリズムとは、他国を犠牲にしても自国の繁栄を求める幻想の未来だ。明日が見えず不安に苛まれる多くの大衆にとって甘い蜜である目的達成にのために手段を選ばぬ権力者が登場し、独裁制と大粛清による恐怖政治を取り入れても正義であるとの思想が蔓延して権力の永続化を図る。そのやり方を極限までまで推し進めたのが『一九ハチ四年』のオセアニアの政治体制であり、オブライエンの「党は純粋な権力の身を永続化させることを目的とする」との言葉に繋がる。オーウェルはナショナリストのユートピアの危険性を警告したのか。2022/06/24
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40
オーウェル入門書! 『1984年』への理解が深まること間違いない。著者の生涯は勿論、物語世界の背景となる情報の提示、日本語訳の読者にとって読み取りにくい細部の含意について詳しく書かれる。『1984年』はオーウェルの生き方とリンクしており、否定的な評価を受けることも多いこの作品、これは彼自身の評価そのままだという印象。社会情勢(同盟国を批判した作品)から出版に漕ぎ着くにも相当苦労して発表。後も多くの批判、拒絶に合う。病気を押しての創作活動、否定的な評価に対する反骨精神。→2023/01/02
コニコ@共楽
23
読書会の課題本なので、掘り下げた解説本を手に取ってみた。副題は「ディストピアを生き抜くために」。執筆当時の時代背景が丁寧に描いている。オーウェルがユダヤ人の虐殺をどう考えていたのか、ナショナリズムと愛国心との違いをどう捉えていたのか等がオーウェルの言葉を交えて分析されている。また、『一九八四年』の巻末附録が過去形で書かれていることの意味や、アトウッドが大いにその影響を受けて『侍女の物語』の附録を過去形で書いたのも発見だった。はたして、『一九八四年』の読者が希望をどれだけ持つか、読書会で話したいところだ。2022/10/21
templecity
12
オールウェル「一久八四年」自体は、1948年第二次大戦直後に書かれたもので、1950年に再び第三次世界大戦が勃発し、その後世界は3つの大国に分割される。その中で国民の監視が進み共産主義に支配されてしまうという空恐ろしい世界となる。西側諸国の共産主義への反発もこの著も影響を及ぼしている。一方でオーウェル自身はユダヤ人に肯定的ではない。ユダヤ人による支配をも予見していたのか。 2022/10/16