内容説明
ファシストは日々の暮らしのささやかな“真実”を軽蔑し、新しい宗教のように響き渡る“スローガン”を愛し、歴史やジャーナリズムよりも、つくられた“神話”を好んだ。事実を放棄するのは、“自由”を放棄することと同じだ。ファシズム前夜―気鋭の歴史家ティモシー・スナイダーが、現在、世界に台頭する圧政の指導者に正しく抗うための二〇の方法をガイドする。
目次
忖度による服従はするな
組織や制度を守れ
一党独裁国家に気をつけよ
シンボルに責任を持て
職業倫理を忘れるな
準軍事組織には警戒せよ
武器を携行するに際しては思慮深くあれ
自分の意志を貫け
自分の言葉を大切にしよう
真実があるのを信ぜよ〔ほか〕
著者等紹介
スナイダー,ティモシー[スナイダー,ティモシー] [Snyder,Timothy]
1969年オハイオ州生まれ。イェール大学歴史学部リチャード・レヴィン講座教授。オクスフォード大学でPh.D.を取得。専攻は中東欧史、ホロコースト史、近代ナショナリズム研究。11のヨーロッパ系言語(とりわけスラヴ系言語)を駆使することで、ホロコースト研究に新しい地平を拓いた。ハンナ・アーレント賞をはじめ多彩な受賞歴を誇る。有力紙誌への寄稿も数多い
池田年穂[イケダトシホ]
1950年横浜市生まれ。慶應義塾大学名誉教授。ティモシー・スナイダーの日本における紹介者として多数の訳書がある(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
(haro-n)
87
現米大統領就任への危機意識から、暴政を浸透させない為の20のアドバイスを記した本。 政治的な内容は勿論、普段の生活の中で気を付けるべき内容も多い。日常生活がいかに政治と結び付いたものであるかを思い知らされる。私達の何気ない言動の一つ一つが政治の動きを変える契機を積み重ねると忠告。多くの人に今読んでもらいたい。多くの小説も含むお薦めの書籍も沢山紹介しているので、気になるものから読みたい。印象的な内容は「忖度による服従をするな」。人は同調圧力に屈し易く支配者側の望むことをしてしまうことに警鐘を鳴らす。→再読へ2018/04/12
syaori
69
ナチが台頭し各国が権威主義やファシズムへ墜落していった20世紀初めを思わせる現在の状況に警鐘を鳴らす本。私たちが同じ轍を踏まないために、ナチ時代の歴史を引きながら挙げられるのは「忖度による服従をするな」から始まる20の心得。ユダヤの星などのヘイトの徴を黙視することで自由や人権の抑圧に荷担しないこと、メディアの繰り返す単語を鵜呑みにせずもっと大きな観念上の枠組みを持つこと、「耳にしたいことと実情のあいだの違い」を意識することなど、傍観・看過することで無意識に暴政に手を貸すことへの警告は特に印象に残りました。2023/02/09
榊原 香織
57
2017年、反トランプで緊急出版されたもの。 ナチが政権とった時代と似ている、と、警告。 ハンナ・アーレントを各所で引用2023/10/03
樋口佳之
54
直面している危険は、「必然性の政治」から「永遠の政治」への移行…ナイーヴで欠点のある「民主共和制」から、混乱しシニカルな「ファシスト的寡頭政治」への移行/「沈没船ジョーク」の国で生きていると、此所は20のレッスン以前なのでは?あるいはもう手遅れでは?という思いも生じますが、4シンボルに責任を持て=>シャレじゃ済まないものに敏感に、5職業倫理を忘れるな=>職業を取っても大事、10真実があるのを信ぜよ=>懐疑を同居させつつなお 等々、生活上の心得として有効だし、小さな事からコツコツでしょうか。2023/08/22
おさむ
47
気鋭の近代ナショナリズム研究家が書いた、トランプ型の暴政と戦う人々の為のマニュアル。忖度による服従はするな。自分の意志を貫け。自分の言葉を大切にしよう。自分で調べよ。危険な言葉には耳をそばだてよ。想定外のことが起きても平静さを保て‥‥。いまの日本にも通じるような箴言ですね。薄い文庫本ですが、中身はたっぷり詰まっています。今こそ本を積み上げよう。真実があるのを信じよう。歴史の教訓に学ぼう。本を出した慶應大学出版会、グッジョブ!2017/07/13