出版社内容情報
本書が対象とするのは、カリマンタン島西部である。西カリマンタンは、インドネシア国家とどのような関わりを持ってきたのか。▼ふたつの国家に翻弄された西カリマンタン華人の60年の歴史を辿る
本書が対象とするのは、インドネシアの一地域ではあるが、ジャワ島やバリ島といった比較的知られた地域ではなく、カリマンタン島西部という、いわば「辺境」である。西カリマンタンは、インドネシア国家とどのような関わりを持ってきたのか。
この地域は元来、インドネシアのナショナリズムの中心であったジャワ島とは全く異なる歴史的背景を持つ。そのような別個の社会がインドネシアという国家の一部になっていく過程は波乱に満ちたものであった。
またこの地域に暮らす華人たちは、インドネシアと中国というふたつの国家に翻弄されてきた。その60年の歩みを辿り「辺境」に暮らす民衆の視点から歴史を考える。
はじめに
序章
1 主題――本書の視角
2 先行研究
3 インドネシアの華人社会
4 西カリマンタン社会の基層構造
5 二〇?二一世紀の西カリマンタン華人社会の動向
6 研究方法
7 本書の構成
第?章 インドネシア国家との弱いつながり
1 西カリマンタンにおける教育とメディア
2 自生的教育機関と中国ナショナリズムの流行
3 中華人民共和国成立への反応
4 シンカワンとポンティアナックの中国語教育機関
5 マスメディアの状況
6 内陸部の華人社会
7 華人の国籍問題と外国人商業活動制限
8 一九五〇年代の西カリマンタンの繁栄
9 一九六〇年前後の中国への帰還
10 インドネシアに遭遇する前の西カリマンタン華人社会
第?章 西カリマンタンの軍事化と華人
1 西カリマンタン・サラワクの共産主義運動の概略
2 インドネシア国軍の動き
3 サラワク独立政体構想の展開
4 ダヤク人の蜂起と国軍
5 難民の状況
6 「一九六七年華人追放事件」の結果
7 共産主義運動の壊滅
第?章 スハルト体制期の華人同化政策と西カリマンタン華人
1 インドネシア国家の存在感の上昇
2 規制と教化
3 西加孔教華社総会(YBS)に見る華人の自治
4 一九八七年サンバス県議会選挙
5 黄威康の運動
6 西カリマンタン華人のジャカルタへの移動
7 同化政策のもとで
第?章 「改革の時代」の西カリマンタン華人
1 一九九八年ジャカルタ五月暴動の衝撃
2 ジャカルタにおける西カリマンタン出身華人の結束
3 西カリマンタン華人の政治参加
4 華人ハサン・カルマンのシンカワン市長就任
5 西カリマンタンの汎華人組織
6 民族対立の脅威
7 「ティダユ」概念による「インドネシア性」の表出
8 台湾との紐帯
9 ジャカルタの西カリマンタン出身者コミュニティーと元宵節の祝祭
10 多様なシンカワン表象を観察する――映画に見るポストスハルト
期の華人
終章
1 各章の要点整理
2 「辺境」について
3 同化政策と西カリマンタン華人
あとがき
略語一覧
参考文献
松村 智雄[マツムラ トシオ]
松村 智雄
早稲田大学アジア太平洋研究センター助手
2006年東京大学教養学部卒業、2008年同大学大学院総合文化研究科修士課程修了、2013年同博士課程修了。
専門は東南アジア地域研究(主なフィールドはインドネシア)、華人研究、移民研究。
内容説明
ふたつの国家に翻弄された西カリマンタン華人。その60年の歩みを辿り「辺境」に暮らす民衆の視点から歴史を考える。
目次
第1章 インドネシア国家との弱いつながり(西カリマンタンにおける教育とメディア;自生的教育機関と中国ナショナリズムの流行 ほか)
第2章 西カリマンタンの軍事化と華人(西カリマンタン・サラワクの共産主義運動の概略;インドネシア国軍の動き ほか)
第3章 スハルト体制期の華人同化政策と西カリマンタン華人(インドネシア国家の存在感の上昇;規制と教化 ほか)
第4章 「改革の時代」の西カリマンタン華人(一九九八年ジャカルタ五月暴動の衝撃;ジャカルタにおける西カリマンタン出身華人の結束 ほか)
著者等紹介
松村智雄[マツムラトシオ]
早稲田大学アジア太平洋研究センター助手。2006年東京大学教養学部卒業、2008年同大学大学院総合文化研究科修士課程修了、2013年同博士課程修了。専門は東南アジア地域研究(主なフィールドはインドネシア)、華人研究、移民研究(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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