出版社内容情報
欧米に対する対抗思想としてのアジア主義から現代の地域主義に至る理論までを見渡し、アジア主義の現代的意味、矛盾や不合理を探る。
「アジア主義」は現代のアジア、および日本に何をもたらすのか。
欧米に対する対抗思想としての日本におけるアジア主義とその源流、そして現代アジアの地域主義に至る理論までを見渡しながら、アジア主義の現代的意味、またそこに内在する矛盾や不合理をも探る試み。
はじめに 長谷川雄一
<b>第一部 アジア主義の原型</b>
第一章 華夷秩序とアジア主義 茂木 敏夫
一 東アジア世界の構造変動の諸相
二 前近代東アジアの華夷秩序
三 近代世界との対峙と新たな秩序構想
四 華夷秩序の新たな展開
五 地域構想の競い合い・新世紀編
第二章 アジア認識の形成と「アジア主義」
―― 第一次世界大戦前後の「アジア連帯」「アジア連盟」論を中心に
スヴェン・サーラ
一 東アジアにおける地域統合とアジア認識
二 明治初期のアジア連帯論
三 日露戦争とアジア主義
四 第一次世界大戦とアジア主義のブーム
五 アジア主義と欧米の目
六 感情から思想へ ―― 明治後期・大正期のアジア主義
第三章 鹿子木員信とアジア主義
―― その思想的特徴を中心に クリストファー・W・A・スピルマン
一 鹿子木の歴史的意義
二 鹿子木の生涯と思想
三 全体主義への接近
四 世界革命論とアジア解放
五 アジア主義への目覚め
六 鹿子木のアジア主義と現代
第四章 満川亀太郎における初期アジア主義の空間
―― 明治末を中心に 長谷川雄一
一 世界的視野とアジア主義への発端
二 中学時代の集大成『理想の日本』の世界
三 「亜細亜モンロー主義」の提唱
四 「太平洋問題」認識
五 亜細亜義会への参加
<b>第二部 近代日本外交とアジア主義</b>
第五章 近衛文麿に見るアジア主義の変化 ―― 中国認識を中心として
庄司潤一郎
一 近衛の中国認識に対する割れる評価
二 近衛の中国との関わり ―― 東亜同文会・東亜同文書院を中心と
して
三 孫文との会見
四 一九二〇年代の近衛
五 満州事変をめぐって
六 日中関係の危機に際して
七 日中戦争の勃発と長期化
八 東亜新秩序声明
九 遅すぎた再認識
第六章 重光葵の外交思想 ―― 「地域主義」と「東亜の解放」
波多野澄雄
一 日中対立と「東亜の安定」
二 「民族国家の生存競争」と「地域的平和機構」構想
三 大東亜共同宣言と「地域主義」構想
四 「重光思想」の歴史的位相
五 冷戦下の外交構想 ―― 連続と断絶の諸相
六 「東西のかけ橋」演説 ―― 冷戦を超えて
<b>第三部 アジア地域主義とアジア共同体</b>
第七章 マレーシアにおけるアジア主義
―― マハティールの欧米観とアジア観 金子 芳樹
一 東南アジアにおける「欧米」と「アジア」
二 マハティールの対外観とその形成過程 ―― 欧米観とアジア観
三 対外政策に見るアジア主義
四 「脱欧米」としてのアジア主義
第八章 東アジア共同体論の形成と展開 生田目学文
一 東アジア共同体論の変遷
二 日本における議論の視角
三 共同体のゆくえ ―― メンバーシップの課題と機能的協力
索 引
【著者紹介】
長谷川 雄一
東北福祉大学総合マネジメント学部教授。1948年生まれ。慶應義塾大学大学院法学研究科博士課程修了。専門分野は日本外交史、国際関係論。
主要著作:『大正期日本のアメリカ認識(編著、慶應義塾大学出版会、2001年)、『北一輝 自筆修正版・国体論及び純正社会主義』(共編、ミネルヴァ書房、2007年)、『満川亀太郎書簡集――北一輝・大川周明・西田税らの書簡』(共編、論創社、2012年)、など。
内容説明
近現代日本のアジア主義とその思想的源流を探る。さらに外交思想および現代の地域主義の議論までを見渡し、アジア主義の評価とその影響、内在する矛盾や課題を浮き彫りにする。
目次
第1部 アジア主義の原型(華夷秩序とアジア主義;アジア認識の形成と「アジア主義」―第一次世界大戦前後の「アジア連帯」「アジア連盟」論を中心に;鹿子木員信とアジア主義―その思想的特徴を中心に;満川亀太郎における初期アジア主義の空間―明治末を中心に)
第2部 近代日本外交とアジア主義(近衛文麿に見るアジア主義の変化―中国認識を中心として;重光葵の外交思想―「地域主義」と「東亜の解放」)
第3部 アジア地域主義とアジア共同体(マレーシアにおけるアジア主義―マハティールの欧米観とアジア観;東アジア共同体論の形成と展開)