内容説明
中世末から民衆の世界に広まり、近世以降、社会に深く浸透した庚申信仰。信仰の様相と、それを育んだ社会の実態の痕跡を現代に伝えているのが、全国各地に数多く建立された庚申塔である。本書は、碑面に青面金剛、地蔵菩薩、三猿などが彫られ、さまざまな大きさ、形状のものがあるそれらの考古学的分析を行う。戦前戦後を通して、庚申塔は好事家たちによる調査・蒐集の対象となり、歴史学、民俗学などの見地からも研究が積み重ねられてきた。本書は、考古学を基盤にそれらを有機的に統合するとともに、新たな調査、分析を重ね、近世日本人の心性、信仰、紐帯から都市・農村の空間と交通の実態にまで迫る、新しい試みの成果である。
目次
序章 近世庚申塔研究の目的
第1章 既往研究の概要と視座
第2章 石塔形態に対する型式学的分析
第3章 近世庚申塔の主尊に対する考古学的分析
第4章 近世庚申塔にみる施主名称の史的変遷
第5章 近世庚申塔にみる造立期日銘の検討
第6章 武蔵国荏原郡馬込村の庚申塔施主
第7章 近世庚申塔造立習俗の展開と村落社会の変化
第8章 近世後期の庚申塔にみる石造遺物の盛衰
終章 近世庚申塔研究の地平
著者等紹介
石神裕之[イシガミヒロユキ]
1973年、神奈川県生まれ。2005年、慶應義塾大学大学院文学研究科後期博士課程単位取得満期退学。博士(史学)。日本学術振興会特別研究員(DC・PD)を経て、2007~2010年、慶應義塾大学文学部准教授(有期)、2010~2013年、慶應義塾大学矢上地区文化財調査室准教授(有期)。現在、慶應義塾大学文学部非常勤講師(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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