内容説明
19世紀ロシアの終末論的な文学作品に、人間存在の原始的自然性への探求をみる、卓越したロシア文学論。ロシア的精神の根源を探る。
目次
露西亜文学(露西亜文学の性格;露西亜の十字架;ピョートル大帝の精神;プーシキン;レールモントフ;チュッチェフ;ゴーゴリ)
附録 ロシアの内面的生活―十九世紀文学の精神史的展望
著者等紹介
井筒俊彦[イズツトシヒコ]
1914(大正3)年‐1993(平成5)年。東京都生まれ。1931(昭和6)年、慶應義塾大学経済学部予科に入学。のち、西脇順三郎が教鞭をとる英文科へ転進。1937(昭和12)年、慶應義塾大学文学部英文科助手、1950(昭和25)年、同大学文学部助教授を経て、1954(昭和29)年、同大学文学部教授に就任。1969(昭和44)年、カナダのマギル大学教授、1975(昭和50)年、イラン王立哲学研究所教授を歴任(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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roughfractus02
6
超越的一者に触れる者は、人間の言葉を否定して単独で一者と向き合う神秘的秘儀を行なう。一方、社会の只中で一者に触れる者は、他の人々や歴史との相克を経て、孤独と絶望の中に自ら入り込む。人間の言葉で満ちた世界で一者と対峙しようとする者が集うロシア文学に、著者は「ポエジー」を見出す。「ポエジー」とは一者に触れた人間以前の記憶である。本書は、西欧主義とスラブ主義に引き裂かれ、地主階級として「無用人」扱いされながら、一者の救済を求める19世紀ロシア文学に潜在するメシア主義を、宗教を否定した20世紀ソ連の体制にも見る。2021/02/08
funuu
0
深い洞察。中国、韓国に対して、今、必要です。2014/02/02
だーうえ
0
露西亜文学の性格、露西亜における基督、ピョートル大帝の果たした精神史的意義について概説することで19世紀ロシア文学の果たしてきた普遍的な役割を明らかにしている。そこからプーシキン→ゴーゴリ→ドストエフスキーと各作家別に露西亜文学とはどのようなものかに迫っている。これから読むであろうロシア長編小説を読む上で足架かりともなり得る良書。2013/10/30
v&b
0
西欧近代の到来にもがくロシアという特異な国、というモチーフが心に残った。面白かったです。後半駆け足で読んだけれど。ロシア文学のみならず、ある程度はヨーロッパ文学のガイドにもなっているのでは。西欧文学ニガテのひとにもオススメできるかも。鈴木俊男さんか、金子遊さんがTwitterで呟いてたのかな。ほかのひとにも、井筒氏の著作は薦められていたのだけれど(『意識・時間・なんちゃら』みたいなやつ)。2012/02/07