内容説明
ロラン・バルト最期のテクスト『明るい部屋』。亡き母への追悼の書であり、新たな小説性を模索する文学的な実験であり、写真が与える経験を思索する写真論であるその書で、バルトは何を問うたのか。
目次
序 バルトの企て
1 『明るい部屋』第1部精読
2 『明るい部屋』第2部精読
3 写真が与える経験
4 記憶と記録/写真と存在
補 『明るい部屋』各節の要旨
著者等紹介
荒金直人[アラカネナオト]
慶應義塾大学理工学部専任講師。1969年生まれ。1992年、早稲田大学理工学部建築学科卒業、その夏に渡仏。1996年、エクス・マルセイユ第1大学文学部哲学科卒業(一般課程および学士課程)。同大学大学院哲学研究科修士課程および専門研究課程(DEA)を経て、2003年、ニース大学大学院哲学研究科博士課程修了、哲学博士取得。帰国後、東京日仏学院、慶應義塾大学、白百合女子大学、明治学院大学、上智大学、早稲田大学での非常勤講師を経て、2006年から現職(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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アルゴス
2
バルトの『明るい部屋』の解説だが、とてもわかりやすい。まとめ部分は、「ストゥディウムを破壊して主観に突き刺さるプンクトゥムにその本質的な表現を見定める。その本質は、一方で統一的な意味作用を搔き乱す「細部」として表現され、他方で過去の存在を現前させる「時間の圧搾」として表現される」(58)ということになろう。この一文だけでも、いろいろと考えさせるものをそなえている。著者自身の写真論は、バルトの考察と比較すると、やはり弱いか……。2018/01/09
sk
1
ここにいないものが、私の目の前に現れる。『明るい部屋』の核心が、「存在」というキーワードのもとで語られる。サルトル『想像力の問題』と『明るい部屋』の決定的な連関を巧く説明している。『明るい部屋』に関する書物のなかではベスト。著者自身の写真論も多く語られており、単なる概説書とは一線を画す良書。2011/12/28
りき
0
僕が赤ちゃんの頃、若い母が僕を抱っこしている写真を見た時の気持ちを表してくれた。2023/12/06