内容説明
刑事立法の新動向の評価、刑法学の在り方、違法論および責任論の基礎、量刑判断の枠組み…変革の時代において刑法学が直面する根本問題に正面から立ち向かう著者の待望久しい論文集。
目次
変革の時代における理論刑法学―著者による解題
社会の変化と刑法
最近における刑事立法の活性化とその評価―ドイツとの比較を中心に
犯罪論と刑事法学の歩み―戦後50年の回顧と展望
刑法と判例と学説―刑法判例の読み方
犯罪論をめぐる学説と実務―ドイツの状況を中心として
刑事実体法分野における実務と学説
いわゆる違法二元論をめぐる一考察
緊急避難の本質をめぐって
過失犯理論の現状とその評価
薬害エイズ帝京大学病院事件第一審無罪判決をめぐって
過失犯における「注意義務の標準」をめぐって
カール・ポパーの非決定論と刑事責任論
量刑をめぐる最近の諸問題
併合罪と量刑―「新潟女性監禁事件」最高裁判決をめぐって
著者等紹介
井田良[イダマコト]
慶應義塾大学大学院法務研究科教授、日本学術会議会員(第20期)。1956年東京に生まれる。1978年慶應義塾大学法学部法律学科卒業。1989年法学博士(ドイツ・ケルン大学)。2006年フィリップ・フランツ・フォン・ジーボルト賞(Philipp Franz von Siebold‐Preis)受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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kakuネコ
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井田良先生の本で一番好きな本。2014/01/28
抹茶ケーキ
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近年の日本では刑罰積極主義が採られている。この背景には、被害者の権利保護の重視、専門家の意見の軽視、社会の複雑化への反作用などがある。その中で刑法学が意義を失わないためには、「一般国民を啓蒙」していくしかない(21-22頁)。法学では「厳罰化は悪」みたいな通念があるような気がするけど、批判するだけではなく「今後の刑法学は、刑法という狭い分野を越えて学際的な見地から市民的安全の保護のための処方箋を書き得ない限り、学としての責任を果たしたことにはならないと思われる」(22頁)というのは確かにその通りだと思う。2017/11/28