内容説明
イスラーム法に時代への柔軟性と対応性を与えるイジュティハード。この人間の側から行なわれる法発見の努力の方法論として発達したウスール・アル=フィクフ学の発展史の世界的第一人者ワーイル・ハッラーク博士による重要論文の本邦初の訳書。イスラーム法から一切の人間性を剥奪する「イジュティハードの門の閉鎖」というオリエンタリズム的言説を膨大な資料の読解から実証的に覆した「イジュティハードの門は閉じたのか」をはじめ、イスラーム法がいかに時代に即した人間のための天啓法であるかを法理論、法論理を中心に透徹した批判精神によって解明した八篇からなる画期的論考集。
目次
第1部 イスラーム法史(イジュティハードの門は閉じたのか;シャーフィイーは、イスラーム法理学の大棟梁だったのか;スンナ派のイジュマーアの権威性について)
第2部 法論理学(スンナ派法学のキヤースにおける非類推的論証;スンナ派法理学における論理学、形式的論証、および論証の形式化;スンナ派法理論における論理構造の発展)
第3部 方法論(シャーティビーの法理論におけるクルアーンの優位について;ウスール・アル=フィクフ―伝統を超えて)
著者等紹介
ハッラーク,ワーイル[ハッラーク,ワーイル][Hallaq,Wael B.]
1955年生まれ。マギル大学(カナダ)イスラーム学研究所教授。1978年ハイファ大学卒業。83年ワシントン大学(アメリカ)にてPh.D.取得。イスラーム法学研究の世界的第一人者。イスラーム法理論の初期形成段階における中心主題を緻密に分析し、多様な教義を生み出したイスラーム法の発展過程を検証。イスラーム法の理論的基礎や方法論に関する考察を多角的に行う
奥田敦[オクダアツシ]
1960年生まれ。慶応義塾大学総合政策学部助教授。1984年中央大学法学部卒業。90年同大学大学院博士課程後期課程規定年限経過後退学。シリア国立アレッポ大学アラブ伝統科学研究所客員研究員(93年~99年)、同大学学術交流日本センター主幹(94年~99年)などを経て、99年4月より現職。専攻はイスラーム法。イスラームの教えを軸にした人間・社会・法・文化にかかわる総合的研究のほか、SFCを拠点にアラブ・イスラーム圏との実践的な相互理解を目指す地域研究・文化交流も積極的に展開している
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