出版社内容情報
生物の大きさは,種ごとに,ある程度決まっています.これは考えてみれば不思議です.たとえばヒトでは,2メートルを超える身長の人がいる一方で,1メートルくらいの人がいますが,ヒトとシロナガスクジラの違いほど差が出ることはありません.なぜなら大きさを調節する仕組みが生物にはあるからです.この,生物の大きさがどのように決まっているかを,遺伝子,DNAのレベルから理解する研究が進み,少しずつその仕組みがわかってきました.本書は,その研究の最新の成果を紹介していきます.
はじめに
第1章 生物の体の大きさはこんなにも違う
一 変化に富む生物の大きさ(大きい生物/小さい生物/大きさの違い/生物の体の大きさはなぜ多様なのか)
二 動物の大きさといろいろな性質(体の構造の違いと棲息環境への適応/クライバーの法則/体の大きさと寿命)
三 植物の大きさとその性質
第2章 動物、植物に共通な大きさ決定の仕組み――細胞の数と大きさはどのように決まるか?
一 体の大きさを決める細胞(動物細胞と植物細胞/細胞の大きさ/体の中にある細胞の数/体の成長の速度と成長する時間/細胞の大きさを決める遺伝子DNAの量)
二 細胞の分裂と成長の調節(細胞分裂の仕組み/細胞周期の調節/サイクリンとCdkの役割/細胞の大きさや数を決める遺伝子)
三 遺伝子とその働き(DNAの構造/RNAの働き/遺伝子の姿)
第3章 動物の大きさはこのようにして決まる
一 成長が早い動物(恐竜ティラノサウルスは成長が早かった/1mmの線虫も成長が早い)
二 動物の大型化・小型化(遺伝子の突然変異による大型化と小型化/線虫の小型化/難しい大型化/ほかの動物の大型化・小型化)
三 大きさを調節する仕組み(インスリン、インスリン様成長因子、成長ホルモンの働き/成長を促すメカニズム/大きさの調節に関与するTGF-s経路/多くの動物に共通する体の大きさ調節の仕組み/タンパク質を変化させて大きさ調節に関与する経路)
四 謎に包まれた体の大きさ決定の要因(再生した肝臓はなぜもとの大きさになるのか/体の大きさの種による違いの要因)
第4章 肥満になるのはなぜか――栄養や環境と動物の大きさ
一 環境と動物の大きさの関係(温度の影響/栄養の影響/ヒトに必要な栄養量)
二 なぜ肥満になるのか(肥満とは何か/肥満はなぜ問題なのか/肥満になる要素/肥満と食事)
三 肥満と遺伝子(肥満を調節する物質/肥満の全容解明はなぜ難しいか)
第5章 植物の大きさはこのようにして決まる
一 動物とは大きく異なる植物の構造(植物の起源と分類/植物の体のつくり)
二 植物はどのように成長するのか(植物の成長の特徴/植物はどこまで高くなれるか/巨木は寿命が長い/モデル植物シロイヌナズナ/植物ホルモンの重要な働き/植物の大型化・小型化)
三 巨大カボチャの秘密(巨大カボチャ、アトランティックジャイアント/なぜ巨大化するのか)
四 植物の大きさを調節する仕組み(トマトを大きくする遺伝子/細胞周期の調節/植物ホルモンの働き/染色体の増加と植物の大きさの関係/植物に肥満はあるか?)
第6章 大きさを自由に変える――大きさの研究の応用
一 農作物、ペット、家畜などの大型化と小型化(大型化したトウモロコシ/今、小型のペットや野菜が人気/魚を大きくする/超大型のクワガタムシ?)
二 新しい有用な生物を作り出す方法(目標を決める/変異の作出と選抜/交雑/遺伝子操作)
おわりに
おもな参考文献
用語集
内容説明
絶滅した恐竜には巨大なものがいた。現在の世界でも巨大なクジラや樹木がある。一方、肉眼では見えない小さな生物もたくさん存在する。生物の大きさは多様であり、どの生物にとっても重要な特徴となっている。では、生物の体の大きさはどのようにして決まるのか。全容は複雑で未解明な部分が多いものの、その仕組みが少しずつわかってきた。本書では、現在までに明らかになった大きさ決定の遺伝子レベルの話から、ペットや農作物などの大きさを自由に変えるような応用的な話まで、わかりやすく解説する。
目次
第1章 生物の体の大きさはこんなにも違う
第2章 動物、植物に共通な大きさ決定の仕組み―細胞の数と大きさはどのようにして決まるか?
第3章 動物の大きさはこのようにして決まる
第4章 肥満になるのはなぜか―栄養や環境と動物の大きさ
第5章 植物の大きさはこのようにして決まる
第6章 大きさを自由に変える―大きさの研究の応用
著者等紹介
大島靖美[オオシマヤスミ]
1940年神奈川県生まれ。69年東京大学大学院理学系研究科博士課程修了(理学博士)。九州大学薬学部助手、米国カーネギー発生学研究所博士研究員、筑波大学生物科学系助教授、九州大学理学部教授、崇城大学教授を経て、九州大学名誉教授。専門は分子生物学、分子遺伝学(線虫、微生物、植物)。1975年、日本薬学会宮田賞および日本生化学会奨励賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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