出版社内容情報
ヒトはなぜ旅ができるのか。ヒトだけがもつ見知らぬ他者との対等な関係「許容」をキーワードに,その答えを求める。
内容説明
ヒトはなぜ旅ができるのか。渡りをする鳥や所属集団を替える霊長類は存在する。しかしそれは、各個体の生活圏での行動である。ヒトは、自らが所属する集団の生活圏を離れ見ず知らずの集団の生活圏に入り、ふたたび自らの生活圏に戻る「旅」ができる。このような行動はなぜ可能になったのか。本書では、旅が可能になる、見知らぬ他者でも中立的で対等にコミュニケーションできる性質を「許容」と呼び、これがどのように進化したか、ヒトと近縁のサル類との比較から浮き彫りにする。
目次
第1章 旅する人たち
第2章 なぜ動物は移動するのか
第3章 旅とはなにか
第4章 “よその人”との対等な関係
第5章 許容が生まれるコミュニケーション
第6章 許容はいかに進化したか
第7章 ヒトはなぜ旅をするのか
著者等紹介
榎本知郎[エノモトトモオ]
1947年鳥取県生まれ。74年京都大学理学部卒業。理学博士。前東海大学医学部准教授。専門は霊長類学。長年ニホンザルとピグミーチンパンジーの行動研究に従事してきた(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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Tadashi_N
15
ナワバリがなく他人を許容できる人類ならではの旅。2022/12/17
hakootoko
8
霊長類学者のエッセイ。「仏教は宇宙をどう見たか」の広告頁より。『観光客の哲学』に関係あるかなと読む。旅はヒトがよそものを「許容」するから成立する。ものの交換は遥か昔からあった(黒曜石の移動)。文化が発達すると情報が交換される(宗教家の旅)。人が来るとご飯でもてなして話を聞いたりする(各地で)。許容(交換や提供の前提)は他の動物をみるとヒトにしか見られない。類人猿は手話を覚えられるが社会構造がヒトと違うので言語が役立たないので使わない(友敵しかないから?)。許容が旅をもたらし旅は平和をもたらすかも。2018/07/16
金城 雅大(きんじょう まさひろ)
7
霊長類学理学博士である著者が「旅」に焦点を当て、現代人と近縁の類人猿とを比較して人間の本質を提唱する内容。キーワードは「許容」。なるほど、非常に興味深い。タイトルの通り、最後に「ヒトはなぜ旅をするのか」に対する著者なりの答えが提示されている。人によって是非はあると思うが、オレは「旅」向きではないということを改めて再認識した(笑)2016/06/23
のうみそしる
1
許容というのは新しい着眼点だと思った。他人を助けることが種の保存につながるってなんだかステキ。動物や原始人などさまざまな具体例を挙げわかりやすくまとめている。2014/02/15
のーべる
1
許容という概念から旅を考えた一冊。 包括適応度という考え方は目からうろこでした。 遺伝子レベルでこれが組み込まれているというのはなんだかそら恐ろしい気がします。 さくさく読めました。2011/01/20