内容説明
現在のおたく文化を決定づける「おたくジャンル」は、どのように成立したのか。SF、同人誌即売会、投稿雑誌の成長から、おたく文化の根源と成立を探る。
目次
序章 おたくの起源
第1章 母体としてのSF(「SF」というジャンルの形成;SFの浸透と拡散;SFブームの到来)
第2章 マンガ文化の発展とコミックマーケットの成立(戦後マンガの動き;若者向けマンガの登場;日本漫画大会からコミックマーケットへ;コミックマーケットの拡大;コミックマーケットの意義)
第3章 特撮・アニメファンダムの形成と商業メディアの成立(はじまりとしての特撮ファンダム;アニメファンダムの成立;アニメジャーナリズムの成立;雑誌の持つ意義)
第4章 おたくの誕生(DAICON3と「マクロス:の衝撃;DAICON4とガイナックスの成立;おたくの誕生;おたくの定着)
終章 現在に響くもの(おたく文化のその後;バブル的価値観とその軋轢;現在との相違点と共通点;今に伝える影響)
著者等紹介
吉本たいまつ[ヨシモトタイマツ]
1970年、新潟県柏崎市生まれ。2003年、成蹊大学大学院文学研究科社会文化論専攻・博士後期課程を単位取得退学。成蹊大学非常勤講師(情報処理)(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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きいち
20
コミケの始まりを読んでると、漫画の草創期はもちろん、民俗学や青鞜、水平社といった、20世紀前半の日本の自由を求めた人のつながりが思い起こされる。どのサークルにも門戸を開き、参加者同士が平等で、売り手と買い手が連携できる…、そんなコミケの特徴の源流が、SFファンダムにCOMの投稿欄ぐら・こん、そして全共闘というのが納得感高い。組織には属さずに今を変える。自分が何を好きなのか認識し、それを正当化する言葉を探し、文字や作品にし、外に発表する。当たり前のように、つながりができる。日本の由緒正しいヨコ社会の伝統だ。2014/05/04
ゲオルギオ・ハーン
7
1950年代のSFファンダムの成立から始めて80年代の「おたく」の成立、90年代のモテ文化に順応できない人という意味も込めた「おたく」という言葉の一般化までをまとめた一冊。もともとSFを広めるために全国各地でファンダムが結成され、有名な作家たちが名前を連ねるSF作家クラブなどが映像作品でSF考証としてバックアップし、SFが急速に広まる。けれど、映像化によって増えたファンは次第に考察よりも楽しみに比重を置くようになっていき、SFファン層が分裂していくという流れは読んでいて興味深かった。2020/06/16
てら
5
偏見や独断の(ほとんど)無い、「おたく史」入門書でした。どうしても党派的になってしまう類書とは別格の、広範囲をカバーした客観的な一冊だったと思います(男性向けジャンル限定、ではありますが)。「おたく」である自分がどこから来たのか、どこへ行くのか、それを知りたい人なら必読と言ってもいい。 大変失礼ながら、もし不満を言うなら、扱う時代が下るに従ってやや論の精度が落ちてしまうところでしょうか?しかしそれでもやっぱり間違いなく類書より高レベルですので、読んで損はありません。2015/05/31
kokada_jnet
4
SF、漫画、特撮、アニメそれぞれの、ファンダムとメディアの歴史を網羅した、画期的な本!2009/04/05
古戸圭一朗
2
SFやコミケを通して、おたく(文化)がどのように成立してきたかの考察。「おたく」それ自体というよりは、後に「オタク文化」と呼ばれるものがどのように変遷してきたかの概観を知ることができる。紙幅があまりないため、30年くらいの歴史を駆け足で追う形となっているが、それぞれより深めることができるトピックが散りばめられていると思う。2019/11/07