内容説明
積極的に経済活動に介入する「大きな政府」か、個人や企業の自由な競争に任せる「小さな政府」か。両者のあいだで揺れ続けてきたアメリカ議会を仲裁すべく、オバマ政権第1期で、情報・規制問題室室長に抜擢された著者が、ナッジ(行動経済学)的アプローチで、第三の道を探る。実践と思索を行き来する、痛快社会科学エッセー。
目次
規制のコックピットに乗り込む
規制はどうあるべきか?
人々の本能にのっとった規制とは?
間違いを逆手に取る
情報公開を工夫する
ためになるデフォルトルール
認知の限界に気づく
規制はマネーボール方式で
さらば、官僚主義
いかにして政府は世話を焼くべきか?
選択アーキテクチャーをシンプルにする
著者等紹介
サンスティーン,キャス[サンスティーン,キャス] [Sunstein,Cass R.]
法学者、ハーヴァード大学ロースクール教授。専門は憲法、行政法、環境法。オバマ政権第1期では、行政管理予算局の情報・規制問題室室長を務めた。法学と行動経済学にまたがる領域から、多数の著作を執筆
田総恵子[タブサケイコ]
翻訳家。十文字学園女子大学教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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えちぜんや よーた
87
法学者なのに行動経済学から心理学、果ては「マネーボール」の分析まで扱うw 学際的とも言えるしエンターテイメント的な政策論集とも言える本。「右」か「左」か、「小さい政府」か「大きい政府」かのイデオロギーに偏った本でない主張がGood!費用対効果を土台として政策を決めて行くことは冷めた目線で、異なる思想をもつ当事者を同じ土俵にあげることには極めて有効なことだと思う。世間一般の人が、ワイドショーなどにときどき出てくる「自称:評論家」のポジショントークに惑わされないようにするためのうってつけの本だろう。2017/12/23
おさむ
38
オバマの友人で2009年から12年に米国の行政管理予算情報規制問題室(OIRA)の室長を務めた著者による、これからの規制論。スター法学者らしく、いまはやりの行動経済学の知見をふんだんに取り入れており、読み応えがある。適切な選択を推奨する様々な仕掛けとしてのナッジの具体例がおもしろかった。政策や規制を考える上で費用対効果の分析は日本でも浸透してきたが、この本を読むとまだまだだなぁと思う。シンプル、情報公開、公平と公正のバランスの哲学をまずは霞ヶ関に導入してもらいたい。2018/02/15
Piichan
15
規制をわかりやすくするにはどうすべきかが書かれています。必要な栄養のリストをピラミッドから皿のイラストにしたことでわかりやすくなったケースが印象に残りました。2018/01/14
Haruka Fukuhara
14
著者は憲法学者で行政法学者で何とか学者らしい。その肩書からして日本の学者とのスタンスの違いが際立つ。本文を読んでいても、自分のイメージする法学者の書く本とは一線を画していて、内容どうこうよりも意識の違いが印象深かった。日本の学者は非常にアカデミックで厳密な学問を好むのに対して、アメリカの学者は行動派で積極的に政府の機関で実務的な活動をするのを好むということなのだろうか。あまり一般化するのも良くないだろうが、日本にはこういった 「法学者」は存在しないような気がする。2017/11/09
Mc6ρ助
9
『官僚も一般の人々と同じくらい、利用可能性ヒューリスティックに弱い。 (p235)』日本の高級官僚の話なのかな?『また民主主義では、 政策立案関係者は一般の人々の懸念に反応する。(p235)』 彼らのことではないな。閑話休題、アメリカの前政権で行動経済学を活かして規制改革を実行した著者の言葉は歯切れよい。我々が地続きの時代にいるとはとても思えないが、それは行動経済学に咎があるわけではなくて、選択した者たちの責任・・・。2018/05/11