失われた国家の富―タックス・ヘイブンの経済学

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  • サイズ B6判/ページ数 181p/高さ 20cm
  • 商品コード 9784757123434
  • NDC分類 345.1
  • Cコード C0033

出版社内容情報

タックス・ヘイブンと戦う方法について最良の書を著した。必読書である――トマ・ピケティ

グローバル資本主義の暗部「タックス・ヘイブン」。近年、先進国の協調による包囲網が敷かれているとはいえ、巨額な資金が税金逃れを目的に依然として流れ込んでいる。まだ20代の若手経済学者によって書かれた本書は、タックス・ヘイブンの実体を経済学的手法により、客観的に計測、現在の対策を検証し、そして未来のグローバルな課税対策を提案する。

イントロダクション
 タックス・ヘイブンに対して行動を起こそう

第1章 オフショア金融の時代
 タックス・ヘイブンの誕生
 タックス・ヘイブンとしてのスイスの黄金時代
 ヴァージン諸島、スイス、ルクセンブルグという魔の三角地帯

第2章 国家の失われた富
 世帯の金融資産の8%
 ルクセンブルグという奈落の底
 千三百億ユーロの税収の喪失
 フランスの場合

第3章 避けるべきミス
 自動的情報交換システムの誕生
 カユザック予算相の脱税事件からの教訓
 外国口座税務コンプライアンス法(FATCA)に期待できること
 EU貯蓄課税指令の大失敗

第4章 何をなすべきか。新たなアプローチ
 金融制裁、貿易制裁
 正当化できて現実的な制裁
 制裁関税率計画を作成する
 ルクセンブルグ:これからまだ伸びるのか
 世界的な金融資産台帳の実現に向けて
 資本に対する課税
 多国籍企業の会計操作
 21世紀社会の租税

解説
 タックス・ヘイブン入門
 本書の位置付け
 日本人にとってのタックス・ヘイブン

【著者紹介】
1986年パリ生まれ。LSE准教授。トマ・ピケティの教え子。

目次

タックス・ヘイブンに対して行動を起こそう(解決策は存在する;タックス・ヘイブンとの戦いに要するコスト ほか)
第1章 オフショア金融の時代(タックス・ヘイブンの誕生;タックス・ヘイブンを利用する脱税のからくり ほか)
第2章 失われた国富(家計の金融資産の8%;ルクセンブルクという深淵 ほか)
第3章 避けるべきミス(租税情報交換協定の誕生;「オンデマンド型」租税情報交換という茶番 ほか)
第4章 何をなすべきか―新たなアプローチ(金融制裁、貿易制裁;正当化でき、実現性のある制裁 ほか)

著者等紹介

ズックマン,ガブリエル[ズックマン,ガブリエル] [Zucman,Gabriel]
1986年パリ生まれ。2013年、パリ経済学校でトマ・ピケティのもと博士号(経済学)を取得。カリフォルニア大学バークレー校研究員を経て、2014年からロンドン・スクール・オブ・エコノミクスの准教授に就任。専門はグローバルな富の蓄積と再分配、公共ファイナンス

林昌宏[ハヤシマサヒロ]
1965年生まれ。立命館大学経済学部卒業。翻訳家

渡辺智之[ワタナベサトシ]
1957年生まれ。一橋大学大学院経済学研究科教授。東京大学経済学部卒業。プリンストン大学Ph.D.(経済学)。IMFエコノミスト、財務省主税局企画官、中央大学教授等を経て、2005年より現職。OECD租税委員会第9作業部会副議長、一橋大学国際・公共政策大学院院長等を歴任。専門は租税論・法と経済学(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

壱萬弐仟縁

26
13年初出。国は脱税対策として減税したのに脱税は減らず、税収だけが減った(70頁)。当て事外れたようだ。重要なのは、銀行と公権力との協力体制は、情報が自動的に課税当局に提供されるオートマティック型でなければならない点(83頁)。貿易制裁の行使は、正当化できる(111頁)。 タックス・ヘイブンにおいて、市民社会が声を上げることが重要(151頁)という。渡辺智之教授の解説によると、問題の根柢には、THを利用する非居住者の課税情報が本国から切り離される要素がある(158頁)。2015/06/17

さきん

14
脱税の実態解明とその対策を提案する内容。パナマ文書を契機にこれらの提案が注目されたら良いと思う。スイスを特に細かく分析し、スイスの輸出に脱税分以上の課税や所得の持ち出しにも高い課税、お金の流れがわかる国際的な金融資本台帳の作成、タックスヘイブン利用者の公表などを提案している。2013年時点で713兆円のタックスヘイブン資産を見積っている。2016/04/24

ニケ

12
タックス・ヘイヴンが何かよく知らずに読んだけど、その一面がわかり良く解説されている。スイスがそのひとつとは思わなかったので、のっけからビックリ。そうか。ナチスから迫害されたユダヤ人の財産を守ったという伝説は秘密業務によるもので、現代では各国に入るはずの税収を超富裕者が略奪しているという図式になるのか。2005年のEU貯蓄課税指令が、一般の人に、自分の資産を幽霊会社に預ける気にさせたという話に吹いた。でも深刻な話だよね。提言はかっ跳んだ感じながら、こうすれば可能と方向性が示されるのが面白かった。2017/05/25

あつもり

3
多国籍企業は価格の操作によって税率の低いタックス・ヘイブンに所在する子会社に所得を、税率の高い先進国の子会社に損失を、それぞれ計上することで租税回避を行う。それに対して、筆者は、活動の実態を表す売上高や人件費等の指標により、グループ全体の所得を各国へ機械的に配分する方式を提唱。この主張自体はよくみられ、また、一般に指標の合意が難しいとされるが、筆者は「今こそ政府の責任を問うべき」、これは「課税逃れの防止を仕方がないとあきらめたり、国の無力を嘆いたりしないという市民の闘いである」(P.151)と呼び掛ける。2021/06/05

ばぶでん

3
先進国を含む多くの国の財政赤字が逼迫する一方、法人税・所得税の引下競争が行われている要因の1つがタックスヘブンを筆頭とする産業誘致等の自国利益優先主義だと考えられる。日本を含め、財政赤字が累増している現況は持続可能性がなく、立て直さなければならないのは明らかであり、特にタックスヘブンの現実の存在意義が脱税にあることを具体的推計数値を以て示した本書の意義は高いと思われる。しかし、何重ものペーパーカンパニーを経ている現状の資産保有形態からすれば自動報告式の世界資産台帳の作成など現実的とは思えない。2016/05/02

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