出版社内容情報
梨乃は、あえて同じ中学出身者のいない都内の高校を選んだ。それは、3.11の被災者であることを隠し、高校生活をまっさらな状態で始めたいと思ったからだ。大震災から3年後の、被災地から遠く離れた場所で、若い心の軌跡を追う物語。
内容説明
ここでは、だれも、わたしを知らない。新たな地で、高校生活をはじめた梨乃は、福島から来た遼と出会う。震災から三年後、十六歳の心の軌跡。
著者等紹介
濱野京子[ハマノキョウコ]
熊本県に生まれ、東京で育つ。『フュージョン』でJBBY賞、『トーキョー・クロスロード』で坪田譲治文学賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
テンちゃん
218
『濱野京子様、君は震災で味わった「恐怖」「苦悩」「絶望」を持った沢山の人々の想いに寄り添い、高校生活で前に向かって立ち向かう少年、少女を通して、「この川のむこうに君がいる」というタイトルの裏側の想いを「この恐怖で造り上げられた苦悩を背負った私が勇気を出して心を開けば、手を広げ共感し前へ進む勇気と希望を与える君がいる」という深いメッセージとして私に送った』o(^-^o)(o^-^)o『震災生活で失われた者を想うトラウマが何かのきっかけで黒い闇波として心を支配する様は、残酷で容赦ない』→2ページへ2019/08/18
いつでも母さん
210
被災者とそうでない者。被災者の中でも被害の大きさはそれぞれだ。どこで何を分けたのだろう。被災者の数だけ悲しみはある。その悲しみを分かち合いたい者、触れないで欲しい者・・関わり方は被災者の数だけあるだろう。善意の心遣いはわかっている。だけど、それが苦しいと思う事もあるのだ。それを話せるのは同じ被災者だけか?16歳・梨乃の心情が切なく苦しい。新たな場所で友が出来たことはとても良かった。この作品は震災から3年後の話だが震災だけじゃなくて事件や事故等・・関わり方を教えてくれている。子供から大人まで読んで欲しい。2019/03/13
ちゃちゃ
128
震災に遭った子どもたちがその後何に苦しみ傷ついてきたのか、その心の揺れを繊細かつ等身大に描いた“3.11後”の物語。震災で兄を亡くし心に深い傷を負った高校生の梨乃。「絆」という言葉への違和感、「被災者」という特別視、押しつけられる善意や同情、自分が生き残ったことへの罪悪感。一瞬にして命運を分けた川は、被災者とそうでない人を隔てる「川」となる。だが、吹奏楽部の仲間や音楽の力を借りて閉ざされた心をゆっくり開いてゆく梨乃。隔たりを越えて互いを想う想像力こそが、新たな関係性を築き成長を促す。タイトルが沁みるなぁ。2020/03/03
やま
119
2011年3月11日に起こった東日本大震災で兄を亡くし宮城県から埼玉県戸田市に父の仕事の関係で転校してきた中学1年生の岩井梨乃が、3年経って誰も知り合いのいない都内の私立緑野学園高校へ入学し、クラブ活動として吹奏楽部に入って悩みながら葛藤しながら生きて行く様を書いた物語です。字の大きさは…小。2021.11.08~10読了。★★★★★ 🌿①➁へ続く→2021/11/12
モルク
112
東日本大震災で兄を亡くした梨乃。その後父の転勤で宮城から埼玉に移り住み今は都内私立高の1年生。未経験ながら吹奏楽部に入部する。そこに被災者だと明らかにしている遼がいた。梨乃は中学の時被災者と知られ、同情、憐れみの目に耐えられなかったため、高校ではそれを隠していた。吹奏楽部の仲間たちに囲まれ梨乃は次第に変わってくる。確かに被災者と言ってもその状況立場で一括りにはできないし、私も同情の目で見ていた。経験値の違いは否めない。本書の「川」の役割も大きい。ティーンズコーナーにあった本だが、いろんな人に読んでほしい。2021/12/07