内容説明
『正倉院文書』に登場する下総国海上郡の他田神護。彼ら古代の地方豪族は、激動する時代のなか、いかにその家系を存続させてきたのか。古代豪族のあり方や地方支配のしくみを探り、古代史を貫く地方豪族の実態を描く。
目次
他田神護の願い―プロローグ
倭王権の成長と地方豪族(前方後円墳体制と下海上地域;倭の五王とその時代;中央集権体制への胎動;推古朝の達成と限界)
律令制地方支配のなかで(乙巳の変と評制の施行;郡司とは;郡支配を支えたもの;受領と郡司)
郡司氏族の行方(天慶の乱と武者の出現;国衙支配の確立;西国国衙の展開)
神護の後裔―エピローグ
著者等紹介
森公章[モリキミユキ]
1958年、岡山県に生まれる。1988年、東京大学大学院人文科学研究科博士課程単位取得退学。奈良国立文化財研究所、高知大学人文学部助教授を経て、東洋大学教授・博士(文学)(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ウォーカージョン
4
自分のような素人は手を出してはいけない。古代豪族から武士への変換の所をもう少し多めに読みたかった。2018/08/14
スズツキ
4
あまりにも深い内容で現時点の私には対処不可能。ピンポイントに研究している専門家向けですな。2015/01/30
wang
4
7世紀頃から12世紀頃までの地方豪族がどのような存在であったのか。国造から郡司レベルの層で地方に譜第して支配を続けた人々。国家官僚機構との関わりや財力など。10世紀から11世紀の受領体勢の確立の中で徐々に国衙郡役所などの権力機構に王臣家人らが入り込み権力闘争が始まりやがて中央官人の土着化により武士が成立する中でどのように変容して行ったか。奈良時代律令体制で中央集権国家が成立したと思っていたが、10世紀頃までは古代のクニの首長が地方支配の中心として存在し続け国司支配は表面的だったことは驚きだった。2013/12/07
坂津
3
豪族の地域支配の在り方や朝廷との結び付きについて、古墳時代から平安時代末期まで概観した書籍。稲荷山古墳鉄剣銘の「杖刀人」や磐井の乱など、五世紀から六世紀にかけての地方豪族の軍事的側面も取り上げられているが、本書で主に詳述されるのは律令制が確立され始める七世紀以降の事例。律令制下において、古墳時代以来の系譜を引く地方豪族が起用される郡司と、朝廷から派遣される国司との間で繰り広げられるせめぎ合いが面白い。律令制が弛緩していく中で、平将門に代表される平安時代の武者がどのように台頭していくのか理解できた。2021/07/07
Mentyu
2
日本古代史の概説書の中には豪族の活躍や武士の成立を扱ったものが少なくないが、本書のようにその一貫性をテーマとしたものはあまり見かけない。在地首長たる古代豪族が律令官制の中で官人として活動し、やがて武士の祖となるという流れを追う上では良いテキストだと思う。参考文献が充実しているのもありがたい。2017/10/29