内容説明
歴史の瞬間は、その時点に立って考えれば、いつも「海図なき航海」であった。戦後日本は、20世紀後半から21世紀の今日までの国際社会をどう航海したのか。めまぐるしく変動する国際環境の中での外交的選択の戦後70年を、ここに再現する。占領期から21世紀の今日に至る日本外交を分析・考慮した、読み応えある戦後日本外交の通史。民主党政権下の日本外交の総括を中心に補訂し、21世紀の世界と日本を考えるに不可欠な視座を提供する。
目次
序章 戦後日本外交の構図
第1章 占領下日本の「外交」
第2章 独立国の条件―1950年代の日本外交
第3章 経済大国の外交の原型―1960年代の日本外交
第4章 自立的協調の模索―1970年代の日本外交
第5章 「国際国家」の使命と苦悩―1980年代の日本外交
第6章 冷戦後の日本外交
結章 戦後日本外交とは何か
著者等紹介
五百旗頭真[イオキベマコト]
1943年、兵庫県に生まれる。1967年、京都大学法学部卒業。1969年、京都大学大学院修士課程修了。広島大学政経学部助手、講師、助教授、神戸大学大学院法学研究科教授、防衛大学校長を経て、現職。その間、ハーバード大学客員研究員、ロンドン大学客員研究員など。現在、熊本県立大学理事長、ひょうご震災記念21世紀研究機構理事長、神戸大学名誉教授(日本政治外交史専攻)。法学博士(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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coolflat
6
戦後日本の主要な軸となったのは、①社会民主主義路線、②経済中心主義路線、③伝統的国家主義路線、だが、①は非武装中立・護憲を掲げる社会党。②は吉田茂に率いられた、軽軍備かつ日米安保に依存し経済優先の保守本流。③は鳩山一郎や岸信介らに率いられた、再軍備・自主防衛を掲げる保守傍流であった。吉田が引退した後の1955年に②と③が合同し、冷戦終結後の1993年まで、いわゆる55年体制が続く。60年安保において①と③が激突し、双方傷ついた後、②の吉田路線が再浮上するが、この吉田路線の継続が55年体制が継続できた理由だ2015/03/01
spanasu
2
占領期から民主党政権までの外交史の通史であり、政治外交史ではないので国内政治との連関はあまり触れない。社会民主主義、対米依存の軽軍備・経済重視、国家主義的の3つの路線があり、結局は吉田路線が選択され、あくまで対米重視を基軸とした外交地平の拡大には自主外交的な評価も得られ成功してきた。著者は基本的には、米重視のもとでのアジアの一員や西側の一員路線を高く評価する。2020/04/01
鍵窪錠太郎
2
戦後日本外交は、対米関係を重視し経済発展に国力を注いで来ており、55年体制下ではその条件を紆余曲折を経ながらもその利益を得ることに成功した。また「社会民主主義」「経済中心主義」「伝統的国家観」と言った観点も戦後日本外交を知るワードとしてはグッド。2014年までの情報なので近年の混沌とした情勢をカバーし切れてはいないが、この辺りは第4版に期待。「おわりに――21世紀日本外交の課題」は近時の内閣総理大臣の権限の強化を踏まえた編者の考えが述べられており、これは漠然と私が抱いていた不安が言語化されていて良かった。2018/05/28
Moloko
2
戦後日本の外交はどうであったかを知るために大変有用だった。豊富な政治的イベントから、40年代、50年代、60年代…の10年間ごとの日本外交を叙述していて、知識量だけでなく、当時の外的状況に対して日本がどのように対応して、又はどの点で躓いたのかを丁寧に描いている。ただの歴史の遺物としての日本外交史ではなく、過去の日本がどうやって戦前の負の遺産への対処し、アメリカとの関係を築き、アジア太平洋での能動的な協調外交を執り行ってきたかを検討して、今後の日本外交を考えていく上でも有用な本だと思った。2016/10/10
YN
0
教科書ではあるけれど、面白い。戦後は日米同盟を中心にすえ、非共産圏の東南アジア諸国との関係を強化してきた日本、21世紀、アジアと米国の関係をどう取り持つか。2019/07/05