内容説明
都市から語れば、現代社会論は異なるかたちへと開かれる。労働、家族、医療、文化、コミュニティ、ネットワーク、震災復興など、社会のいまを語るコトバから都市論のコトバへと「翻訳」する、現代を読みとく社会学者の野心的なアプローチ。
目次
「ゆらぐ都市」から「つなぐ都市」へ
第1部 問いのなかの都市(計画と開発のすきまから―人間不在の足跡を読む;都市は甦るか―不安感の漂うなかで;不安の深層から―見えない犯罪の裏側を探る;働くものの目線―サービス産業化する都市の内側)
第2部 ゆらぐ都市のかたち(見えない家族、見える家族―イメージの変容から;あるけど、ないコミュニティ―町内会のゆくえ;きしむワーク―行政のはざまで;生と死のあいだ―都市高齢者の孤独に向き合う医療と介護)
第3部 つなぐ都市へ(新しい絆のゆくえ―ソーシャル・キャピタルのいまを解く;文化を編みなおす―夢物語から立ち上がる;サウンドスケープ考―あふれる音の向こうに)
第4部 都市のリアル(上からと下から―都市を見る漱石の目、鴎外の目;“都市的なるもの”の救出―ベンヤミン補助線にルフェーヴルを読む)
著者等紹介
吉原直樹[ヨシハラナオキ]
大妻女子大学社会情報学部教授、東北大学名誉教授
近森高明[チカモリタカアキ]
慶應義塾大学文学部准教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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本命@ふまにたす
3
社会学的な視点から書かれた、現代都市に関する論考を集めた一冊。教科書的な硬さがあまりなく、理論よりも「リアル」の事例に関する部分が全面に出ている印象。都市の労働環境に関する論考など、興味深く読めた。2022/08/29
ja^2
2
都市開発を生業として、色んな場所に色んな街を造ってきた。戸建住宅地、リゾートタウン、マンション街に、都心の駅周辺開発。▼しかし、街開きしたその日から、計画した者の意図とはかけ離れた形で街は育っていく。まさに都市のリアルがそこにある。▼そこで、計画するばかりでなく、そのリアルに向き合おうと、去年から地元で自治会長なるものをやっている。▼多くの者にとって、自治会とは空気のようなものだ。ないと困るのだが、普段意識することはない。ましてや自分から空気になろうとする者はいない。このリアルと計画をどう結びつけるか。 2016/02/18
れどれ
1
終盤の、ルフェーブルの"転繹法”とベンヤミンの"翻訳"を交差させた都市論は見事だった。是非よりも論法として美しい。ただ、主論があるようでない。論法について始終語っていた。都市の実情をデータと事実関係できれいにまとめてくれている一方、その将来については方向性を示唆するだけで具体性がともなわず、せっかく美しい論法を打ち立てたんだからもっと肉付けしてみせてくれよと、惜しい感じがした。2021/07/24