内容説明
「政教分離」をもたらした僧侶・島地黙雷。キリスト教を敵視する一僧侶にそれが可能だったのはどうしてか?そしてその意図は?黙雷の主張に耳を傾け、彼の行動を追うことで迫る。一人の僧侶に視点をすえた幕末・明治時代史。黙雷は明治やそれ以降の日本の社会にどんな影響をあたえたのか?そもそも近代日本にとって宗教とは何なのか?―。
目次
1 長州に生まれて(僧侶の子;長州をでる ほか)
2 海を渡って―ヨーロッパとインド(日本を離れて;「東洋」をみて考える開化 ほか)
3 黙雷の時代(教部省の理想と現実;教部省批判の開始 ほか)
4 黙雷と明治仏教(異安心と本願寺の分裂抗争;長州派と真宗の退潮 ほか)
著者等紹介
山口輝臣[ヤマグチテルオミ]
1970年生まれ。東京大学大学院人文社会系研究科博士課程修了、博士(文学)。専攻は日本近代史。現在、九州大学大学院人文科学研究院准教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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海星梨
3
島地黙雷って名前からしてやばい人じゃないか洋行とかすげえという前印象で読んだので、冷や水浴びせかけられる切り口でしたが、面白かったです。結局成功する人ってずーっと同じことを言っている人なのかもしれない。あとコネがある人。世の中の真理かなコレ。成し遂げたことが正しいとか、世の役にたつかにはかかわらず。大教院という新たなgdgd明治政府を知れたので良かったです←。雷夢(らいむ)さんにキラキラネームじゃん!?って内心思いつつ。2019/02/23
sonohey
2
浄土真宗本願寺派の僧侶、島地黙雷。廃仏毀釈と、西洋化に伴うキリスト教の台頭と政治的に闘い、「政教分離」により、日本における仏教の立場を明確にした大物宗教人である。特筆すべきは長州の同郷の木戸孝允、広沢正臣ら当時の大物との太いパイプや、海外視察によって「敵」であるキリスト教を研究し、宗教の見本とした柔軟性だろう。「日本史リブレット」の性格上、黙雷の政治力がフォーカスされており、信仰については仏教を盲信していたかのようにも受け取れるが、果たしてその内実やいかに。2015/02/24
令和の殉教者
1
政治の場面に少しでも宗教が顔をのぞかせると、私たちは過敏に反応する。「政教分離」は当たり前なのだが...。島地黙雷。長州人脈をフル活用して「政教分離」の導入を敢行した彼が目論んでいたことは、キリスト教の拡大を阻むこと、そして、仏教をその二つとない手段として位置付けることにあった。神道は「道」であって「教」ではなく、儒教は「教」であっても「宗教」ではない。キリスト教と仏教、2つの宗教は、政治の不干渉のもとで自律した領域を担う。彼の生み出した「宗教」「政教分離」の構造は、今なお私たちにとりついている。2023/10/09
めっかち
1
島地黙雷についてよくまとまっている。良書。2022/09/15
非実在の構想
0
島地黙雷の思想については全く知らなかったので参考になった。大教院のぐずぐずっぷりと黙雷のふわふわした思想はどうにかならかったのか。2014/10/21