内容説明
クジラ・マグロ・ウナギ…。私たちの食卓を彩ってきた魚たちをとりまく国際的な状況に、二十世紀末から大きな変化が生じています。食肉への不安や健康志向の高まりで、魚の消費量は世界的に増加傾向にあり、世界の漁場は水産資源の争奪戦の様相を呈しはじめています。資源枯渇の危機に瀕している魚種も少なくありません。水産資源問題は、二十一世紀の日本、さらには世界のゆく末に、大きな影響を及ぼす問題の一つとなっていくことでしょう。では、日本の人びと、さらには世界の人びとは、水産資源問題をいつごろから意識化しはじめ、どのような対応を行ってきたのでしょうか。本書では、その起源を問いながら、「水産資源問題の社会史」の出発点を描いています。
目次
資源保全史の視点で描く漁業・漁政史
1 水産資源繁殖をめざす十九世紀末の日本
2 近世の資源保全慣行
3 資源保全政策の登場
4 資源繁殖という理念と政策の登場
5 資源繁殖の時代
著者等紹介
高橋美貴[タカハシヨシタカ]
1966年生まれ。東北大学大学院文学研究科博士課程後期修了。専攻、日本近世史。東京農工大学大学院共生持続社会学専攻准教授、博士(文学)(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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星規夫
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小冊子戦術第二十七弾。「産業」などと偉そうに言ってみても、所詮は人間による自然の侵略・略奪に過ぎない。巨大な自然からおこぼれを頂いているに過ぎない。そういったことについて、近世・近代の日本とドイツの国家による管理を多少なりとも知ることが出来る。2012/08/28
紙魚
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明治国家が整備していった漁業資源繁殖政策を、特にサケ漁に着目し、江戸期以来の慣習と、西洋諸国の漁業規制の文脈から述べている。巻末においては同じ文脈で林業規制が進んだことも述べられている。サケの他はわずかにハタハタの禁漁に言及されているくらいで、いささか物足りないが、ブックレットという性格上、仕方がないか。2009/08/19