内容説明
アッバース朝の実質的な建国者であるカリフ・マンスールは、ティグリス河畔に新都バグダードを造営し、東西6000kmにもおよぶ巨大なイスラーム帝国の基盤を築き上げた。我が国では知られていない偉大な帝王の生涯を、アラビア語の年代記に残された無数の逸話をもとによみがえらせる。
目次
イスラーム帝国の創建者
1 革命の嵐のなかで
2 血塗られた覇業
3 帝都バグダードの建設
4 帝王をめぐる人々
著者等紹介
高野太輔[コウノタイスケ]
1968年生まれ。東京大学大学院人文社会系研究科博士課程修了。専攻は初期イスラーム史。現在、大東文化大学国際関係学部准教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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MUNEKAZ
13
アッバース朝の実質的な創建者マンスールを紹介したリブレット。イスラム世界の大帝たちの中ではいまいち影が薄いのだが、なかなかアクの強い面白い人物であることを再確認。功臣たちへの容赦の無い粛清や、民族や宗教に囚われない人材登用など硬軟のバランスにとれた印象を受ける。面白い逸話も多く載っており、シリーズの中でも平易で読みやすい一冊だと思う。2016/05/07
ジュンジュン
5
本書は当たり。まず読みやすい。そして面白い。ウマイヤ朝からアッバース朝への交代を”アッバース革命”と呼ぶ。その革命の担い手がマンスール。敬虔なイスラム教徒というより、権力欲の強い野心家でとても魅力的。アラブ人以外のムスリムにも門戸を開き、アラブ帝国から真のイスラーム帝国へと脱皮させ、アッバース朝500年の礎を築く。2020/04/23
ぽんすけ
2
アッバース朝800年弱の基盤を築いた人物。ほんとんどこの人の残した遺産でもって国家が回ってたんじゃなかろうか。アッバース朝というと、個人的になんか陰鬱なイメージを持ってたんだけど(アラビアンナイト男ハールーン・アッ=ラシードを除く)、そのイメージを作ったのはマンスールのせいだったんだなと今回よくわかりました!国家運営は冷徹でないとできないんだけど、この人明の朱元璋並みに猜疑心すごいよ。建国の功臣を次々殺していくし、各地にスパイはどんどん送り込むし。栄耀栄華を極めた人だけど、寂しい人であったのかもしれない。2020/12/18
はぽぽ
1
アラブ帝国からイスラーム帝国へを学ぶように読んだ。マンスールがシーア派やウマイヤ家の残党を鎮定していたのは知っていたが、廷臣やアッバース家に近い人物たち(建国の功労者アブー=ムスリムなど)への猜疑心が強くスパイを派遣している。内政においては反対派を掃討したのちバグダードの建設に取り掛かったほか、ウマイヤ朝が怠っていた地方の情報収集を体よく行えるような駅伝制?を整備し、中央集権化を進めた。また積極的にマワーリーを採用して「民族を問わずムスリムであれば平等に扱う」という原則を生み出した。2021/05/14
どうろじ
1
ネストリウス派がアッバース朝の下で伸長したというのは初耳だった。2018/01/09