内容説明
漢民族は世界最大の民族であり、その人口は十一億人を超えている。その淵源は、黄河の中下流域に生じた文明、いわゆる黄河文明を築いた人びとが、自らを華夏、華人などと称した頃にまでさかのぼる。当初、わずかな限られた領域に居住した人びとが、何故に今日みるような巨大な民族にまで拡大しえたのであろうか。二十一世紀は民族の時代ともいわれる。本書ではそうした問題意識を持ちつつ、漢民族形成のもつ歴史的意味について考えてみたい。
目次
中国史上の諸民族と漢民族
1 漢唐間の北方民族と中国
2 モンゴル族の国家
3 女真族の国家
4 長江流域以南の諸民族
5 現代中国における民族問題
著者等紹介
川本芳昭[カワモトヨシアキ]
1950年生まれ。九州大学文学部卒業。九州大学大学院文学研究科博士課程単位取得退学。専攻、東アジア古代・中世の民族問題、国際交流、政治史。現在、九州大学大学院人文科学研究院教授
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感想・レビュー
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電羊齋
3
本書前半部分では、北方諸民族とそれらが建てた王朝である北魏、遼、金、元、清の統治制度と相互の類似点がわかりやすく整理されている。紙幅の関係上後半での南方諸民族関連部分が短いのが惜しい。⑤「現代中国における民族問題」の「中国における民族差別」では中国共産党の民族政策の形成過程を手短にうまくまとめてあり参考になる。そして冒頭と結論部分での、漢民族もまたほかの諸民族との歴史上種々の抗争・融合をへて形成されてきたものという指摘は忘れてはならないと思う。2014/01/19
韓信
2
鮮卑、契丹、モンゴル、女真(満洲)らによる中国支配の構造の類似点や相違点を簡潔に比較・整理し、北魏を基点とした征服王朝の発展段階を概観した内容になっている。紙幅の都合上、多民族の融合による「漢民族」形成史として片手落ちになるのは仕方ない。女真と契丹・モンゴルに中国文化への温度差があるのは、中国東北方の狩猟牧畜民である前者と違い、モンゴル高原で東西交易にも関わっていた遊牧民である後者たちは、西方の文明にも触れており、中国文明を相対視できたからではないか。2012/10/31
Jirgambi
1
北魏、元、清といった漢民族を「征服」した王朝が何を浸透させ何をかえって受け容れたか。漢民族もまた然り。今も多様だが、明清期からの人口増加以前ならもっと多様化が顕著だったのかも。北魏の仏教保護政策は、確かに外来の仏教ならば統一に使えるな、と納得。2016/11/28
こずえ
0
中国史において漢民族が支配していた時期は案外長いわけではないし、蛮族とかなんだとかいってる異民族にボロ負けしていることが多い。特別新しいことをあまり書いていないが中国史を非漢民族としての視点から整理するにはよい1冊
7kotae
0
主に北部の諸民族がどのように中国(漢民族)を支配したか、またそれらの諸民族は支配する上で逆にどのように影響を受けたか、そして諸民族の類似点・相違点など…についてが重点的に語られ、後半は南部諸民族と現代の中国諸民族についてあっさりと触れられている。「中国」の大きさが時代ごとに拡大してきたこと、非漢族政権だった清の存在、そして今の中国の範囲…改めて考えてみるとたしかに何とも不思議なものだなあ。2014/03/18