内容説明
イスラーム世界の公衆浴場は、ギリシア・ローマの伝統が発展して形成された重要な宗教的・社会的施設である。人々は現代に至るまで、古代以来の叡智が結晶した、この「生きた文化遺産」を生活のなかで活用し続けている。本書では、浴場を通してイスラーム文化の内面に分け入るとともに、これをヨーロッパや日本など、異文化世界の人々とイスラームとのあいだの相互イメージが形成される場としても捉えた。
目次
1 古代ローマ文化の遺産
2 イスラームの入浴文化
3 詩と物語のなかの公衆浴場
4 ヨーロッパとイスラーム
5 日本人とイスラーム文化
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
サアベドラ
8
風呂場を覗けば風俗が見れる。ローマの浴場(テルマエ)文化の正統な継承者、イスラームの浴場(ハンマーム)文化を扱った本。後半ではそれを見たヨーロッパ人の証言や日本の風呂文化との違いなども書かれている。イスラーム世界では男女別浴で、男性はちゃんと前を隠していたのに、日本ではつい最近まで混浴でみんな素っ裸。前近代の日本人の性に対する大らかさ(無神経さ?)を改めて確認させられた。そうそう、冒頭の一文でいかがわしい光景を想像したそこのアナタ、アナタの頭は下品なフランク人と同レベルです。2012/12/17
ああああ
5
ギリシャ、ローマの浴場文化を受け継いだのはイスラム教国だったのかー。偶像崇拝、具象画は禁止されていたはずなのに、銭湯の壁画に限っては美女も美少年も英雄譚もオッケーというのはとても面白い。テルマエロマエの続編はペルシアが舞台でもいいんじゃないか。2014/04/08
†漆黒ノ堕天使むきめい†
3
多くの感想にもテルマエロマエについて書かれているが、私もそれを思い出した。浴場だけでもイスラームの文化が見出すことが出来、ローマのような流れとイスラームならではの流れが混ざって進化していったのだなと分かった。 後半の他の地域からの人が浴場をどのように見たかについては日本は勿論湯船に浸かる文化があるので、抵抗感がなかったようだが、ここで触れられていたヨーロッパは抵抗を示していて面白い。歴史では行なっていたことも時代が流れると非常識になると言うのも納得できる。2015/08/05
rbyawa
3
a105、そもそもこの世界史リブレットにはイスラームと名前の付く本が少なくないんですが、イスラームって要するに宗教ですし地域は広いし多様性があるし、区分として不自然ではないもののそうそう多用するものでもないんじゃね? と思わないでもないんですが。こういう漠然とした内容で、それぞれの国の微妙な違いやエピソードをずらずらっと並べる場合は結構楽しいです。キリスト教世界は水浴そのものが禁止、イスラームは基本共同浴場推奨、東洋は、、、日本なんかは混浴ですね、まあ、正直ばらけた内容ですがこの本はそれはそれでいいやw2010/04/28
ドウ
2
中東研究の現人神的な人の、浴場の文化史に関する平易なブックレット。ギリシア・ローマの文化を引き継いだイスラーム世界の浴場文化のみならず、千夜一夜物語やアラビア語詩、さらには日本からヨーロッパまで、浴場文化を比較する。予想通り注釈がものすごく詳しくて、その知識量/質に圧倒される。個人的には中国の浴場文化の章で成尋が出てきたのが驚きだった。2016/09/21