四つの小さなパン切れ

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  • サイズ B6判/ページ数 182p/高さ 20cm
  • 商品コード 9784622077510
  • NDC分類 956
  • Cコード C0098

出版社内容情報

16歳でアウシュヴィッツに収容された女性の回想録。ナチスへの告発ではなく、その後の人生をいかに生きのびたかを美しい断章で綴る

「ここで起こったことを証言するために生きておくれ」。わたしは瀕死の女性からパン切れを受け取り、彼女の目の前で食べた――。16歳で家族とアウシュヴィッツに収容され、ただ一人生き残ったハンガリー系ユダヤ人女性の回想録。ナチスへの告発ではなく、恐怖を超えてその後の人生をいかに生きのびたかを美しい断章で綴り、フランスで評判を得た。著者は今年86歳。新たな世代のために勇気をもって語られた、貴重な証言。

編集者による序文/第一部 時のみちすじ:まなざし/出発/ある一日/しらみ/パン  /足/人間とパン/ドイツ牧羊犬(シェパード)/渇き/エドヴィージュ/わたしの毛布/どうして?/点呼/親切な看守/アウシュヴィッツのコンチェルト/生きる  /一九四四年のクリスマス/待つ/最後の歩行/あなたに/パンの香り/本物の家  /ほほえみ/死ぬこと/穴のあいたトランク/第二部 闇から喜びへ:わたしの人生の意味/最後のとき/ハンガリー/危機/直感/わたしの木/空の記憶/心の記憶/経験 /はいといいえ/再生/顔のないユダヤ人/思いがけない和解/証言し、伝えること  /出会い/神の顔/源泉/もろさの恩寵/喜び/あなた/希望の熱烈な支持者/わたしの井戸/時のなかで……/わたしの不安/わたしの家族 /愛/著者の生きた時代について/訳者あとがき

内容説明

16歳のとき、マグダはアウシュヴィッツ=ビルケナウに強制収容された。母と妹は到着するなりガス室で殺され、別れのまなざしを交わすことさえできなかった。家族でただ一人、そしてハンガリーのユダヤ人の中でも数少ない生き残りとなった著者は、長い沈黙ののちに、言葉を紡ぎはじめる。そして中高生にみずからの経験を語り伝える活動を始め、さらに数十年の時を経て、本書が生まれた。「わたしは偶然のほほえみに照らされた道を選んだ」。ここにあるのはナチスへの告発ではなく、恐怖と死の記憶を超えて、いかに人生を取り戻したかを静かに綴る、生についての記録だ。新たな世代のために勇気をもって語られた、貴重な証言。

目次

時のみちすじ(まなざし;出発;ある一日;しらみ;パン ほか)
闇から喜びへ(わたしの人生の意味;最後のとき;ハンガリー;危機;直感 ほか)

著者等紹介

オランデール=ラフォン,マグダ[オランデールラフォン,マグダ] [Hollander‐Lafon,Magda]
1927年、ハンガリーに生まれる。児童心理学者。16歳のとき、アウシュヴィッツ=ビルケナウ収容所に、母と妹とともに強制収容される。家族のなかでただ一人生き延び、戦後はベルギーを経てフランスに居住する

高橋啓[タカハシケイ]
1953年、北海道に生まれる。翻訳家。早稲田大学文学部卒(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

ケイ

146
命が尽きようとしている老女がさし出したカビの生えた小さな四つのパン。若いのだから生きてアウシュビッツでの事を証言してと老女は言った。殆どの命が奪われたが、生き残った人達もいる。絶望しかないような所で、それでも光り輝いて残るわずかな善意があった。決して噛まず、一度などこっそり身体を擦り付けたシェパード。彼女の凍えた足を新聞で擦り木靴を与えたドイツ監視兵。脱水になりかかった彼女に誰かが与えた水。それらの人間性は、生きる力を与える。恨みではなく、光るものを、彼女は血反吐を吐くように語っている。2017/02/15

新地学@児童書病発動中

118
名著『夜と霧』と共通した内容を持つ本。ただしこちらの作者はユダヤ系ハンガリー人で、本文が首尾一貫した散文ではなく、断章や詩が含まれているところが異なっている。『夜と霧』のようなインパクトは持っていない気がするが、ナチスの非人道的な行為は鮮やかに伝わってくる。絶望だけではなく、希望も描かれていて、本のタイトルにもなっている収容所でかびた4つのパンを老女からもらうエピーソドは、絶望の只中にも救いがあることを、読者の心に刻みつけるものだ。2014/06/29

藤月はな(灯れ松明の火)

91
青春の真っ只中にアウシュビッツに収監された直後、母と妹が処刑されたことを知らされ、戦後、生き延びて出てこられたマグダ・オランデール=ラフォン。永遠に気まぐれに続く点呼などによって人間の尊厳を剥ぎ取られ、生き残るために人のパンを奪い去るという人間性を見つめながら彼女は人としての尊厳を見失わなかった。まだ、生きている人を見捨てなければならなかった苦悩、「私は助からないから若いあなたが生きて伝えて欲しい」と4つのパン切れを与えた老婆、「飢えを知らない人はパン切れが与える喜びを知らない」という言葉が胸打つ2015/05/21

里季

54
ハンガリーの女の子マグダはある日突然ユダヤ人であるという理由でアウシュヴィッツに送られた。これまで、様々な体験談、ドキュメンタリー、小説、シンドラーのリストの様な映画で、知ってはいたが、この作品は一味もふた味も違うものであった。あまりの過酷な経験をしたマグダはずっとこのことを沈黙に伏してしまい、そして口を開いた時には、その経験とは対照的な美しい言葉の数々がこぼれ出てきたのであった。まるで磨かれた真珠のような言葉が、しっかりと力を持って彼女の心を映し出したのであろう。全編が美しい詩のようだった。2013/12/24

こばまり

50
後世に伝えるという使命は人生の大きな糧にもなるが枷にもなると、著者は望まぬ感想であろうが抱いた次第。否応無しに生涯のテーマになってしまう。いのちや自由、尊厳を破壊する行為に改めて怒りを覚える。2016/08/03

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