出版社内容情報
人生の最後に食べたいおやつは何ですか――余命を知った主人公は、島のホスピスを選ぶ。食べること、生きることを描き出す感動作
内容説明
余命を告げられた雫は、残りの日々を瀬戸内の島のホスピスで過ごすことに決めた。そこでは毎週日曜日、入居者がもう一度食べたい思い出のおやつをリクエストできる「おやつの時間」があった―。毎日をもっと大切にしたくなる物語。
著者等紹介
小川糸[オガワイト]
1973年生まれ。2008年『食堂かたつむり』でデビュー。2010年に映画化され、2011年にイタリアのバンカレッラ賞、2013年にフランスのウジェニー・ブラジエ賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
kou
1378
おやつの日の度に、涙が止まらなくなり文字が読めなくなった。読みながら、何度も死生観について考えさせられた。自身だったら、おやつに何をリクエストするだろうか・・・正直、今は思いつかない。でも、食事全般で言ったら、「祖母が作ったロールキャベツ」になると思う。家族が、何度か再現してくれようとしたが何かが違っていた。ライオンの家でリクエストしたら作ってくれるだろうか。ケチャップに良く合う懐かしいロールキャベツを。って、これは本の感想じゃなく、一人語りになってしまったかな(汗)。2020/08/20
馨
1354
死がテーマの小説。ゆっくり堪能したくて毎朝少しずつ読みました。主人公雫の話もホロリときましたし、モモちゃんの話も短いけど泣けました。死後に遺された人たちに思ってもらえたり、実体がなくても遺された人たちを見守ったり先に逝った人に会えるなら死を恐れるなくなれました。私も最期はライオンの家のような場所に行きたいです。2020/01/03
鉄之助
1196
「匂い」に始まり「匂い」に終わる小説だった。瀬戸内の空気がおいしい、レモン島にあるホスピスが舞台。施設の責任者マドンナからの手紙の、”文字の匂い”を主人公・海野雫が吸い上げた場面から、物語の虜になってしまった。手紙の匂いでなく、文字の匂い! 物質としての手紙ではなく、それを書いたマドンナの人柄含め全てを受け入れる瞬間、のように思われた。毎週日曜日に施設で出される「ライオンのおやつ」。毎回、悲しい旅立ちが付きまとうが、決して寂しさだけでなく、前向きな気持ちにさせてくれる。小川糸マジックか? 堪能しました。→2021/07/01
bunmei
1151
私の身近に、この物語に出てくる百ちゃんのような小学校3年生の女の子がいます。余命宣告を受けながら、現在も明るく生活をしています。でも、普通の学校生活は送れず、保健室登校をしているそうです。ちょっぴりおしゃまで、生意気な所はありますが、おしゃべり好きな素敵な女の子です。辛い治療によって体の各所に副作用も出ていますが、健気に泣き言を言わない彼女を見ていると、こちらが勇気と元気を貰い、思わず微笑んでしまいます。これからも彼女には、生きることに思いっきり我が儘になって欲しいし、執着して欲しいと願っています。2019/12/12
さてさて
1143
私たちは明日が当たり前に訪れる前提で物事を考えています。でも、それは決して当たり前のことではなく『明日以降が来ることを当たり前に信じられることは、本当はとても幸せなこと』そのことに気づきました。『私の人生のレールは、着々と死に向かって進んでいる。私はその事実を、人よりも少しだけ早く知ったに過ぎない』と雫が最後に見せた人生の輝き。とても重いテーマを”おやつ”という身近なものを象徴的に絡ませながら見事に描き切った小川さんの傑作。涙が止まらないその結末に、人のあたたかさと、生きることの喜びを感じた絶品でした。2020/12/05