内容説明
何者でもないがゆえに、逆に、人間の生の全体と深く係わる。『特性のない男』で知られるムージルは、他者性、あるいは一回しか存在しないものをどのように表現しようとしたのか。また、イメージや比喩の扱いをとおして、非言語的なものを言語によってどのように語ろうとしたか。ムージル文学の奥行に深く分け入り、その創作方法と小説世界を明らかにする。
目次
第1章 夢の流出―『少年テルレスの惑い』について
第2章 非個人的なものが現われるトポスとしての“部屋”―『少年テルレスの惑い』から短篇集『合一へ』
第3章 嫉妬の手―『愛の完成』について
第4章 披かれた風景―『グリージャ』について
第5章 善良な人へのオマージュ―『トンカ』について
第6章 比喩という方法、あるいは比喩のなかの出来事―『特性のない男』について
第7章 “贈られた”可能性感覚―『黒つぐみ』について
著者等紹介
赤司英一郎[アカシエイイチロウ]
1953年福岡県生まれ。東京大学大学院人文科学研究科博士課程単位取得退学。1987~1988年オーストリア政府奨学生としてクラーゲンフルト市のローベルト・ムージル・アルヒーフに留学。1999~2001年ウィーン大学人文学部東アジア研究科客員教授。現在、東京学芸大学教授。専門はドイツ・オーストリア文学(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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