訳された近代 - 文部省『百科全書』の翻訳学

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  • サイズ A5判/ページ数 389p/高さ 22cm
  • 商品コード 9784588445057
  • NDC分類 801.7
  • Cコード C3081

出版社内容情報

明治初期に文部省主導で進められ、最先端の西洋文明を紹介した全97編の『百科全書』翻訳出版事業を概観・分析する、初の翻訳学的…明治初期、当時一流の洋学者たちを総動員して進められた、文部省主導の大規模な翻訳プロジェクトがあった。英国の百科事典を70名以上に及ぶ翻訳者・校正者が協働して日本語訳し、最先端の西洋文明を紹介した全97編の出版事業は、近代日本の言語・文化・学問に何をもたらしたのか。事業の概観とともに、各分野の主要翻訳語に着目し、翻訳学の視点から初めて総合的にアプローチした画期作。

序 章 文部省『百科全書』への招待

 一 翻訳テクストの研究

 二 『百科全書』研究の意義

 三 本書の構成



第一章 翻訳研究における「等価」言説──スキャンダルの罠

 一 翻訳の理論と「等価」

 二 欧米翻訳学事始

 三 近代日本の翻訳論

 四 日本の翻訳学



第二章 文部省『百科全書』という近代──ふぞろいな百科事典

 一 国家的翻訳プロジェクト

 二 翻訳機関の変遷

 三 『百科全書』の輪郭

 四 起点テクストについて

 五 翻訳者と校正者の群像



第三章 「身体教育」という近代──文明化される所作

 一 身体の近代

 二 明治政府と「教育」

 三 「身体教育」の行方

 四 「体育」とは

 五 国民国家の「スポーツ」



第四章 「言語」という近代──大槻文彦の翻訳行為

 一 大槻文彦と「言語」

 二 『言語篇』の刊行事情

 三 文法をめぐる『言海』と『百科全書』

 四 「言語」とは

 五 ためらいがちな「言語」というもの



第五章 「宗教」という近代──靖国体制の鋳型

 一 「宗教」と非「宗教」

 二 翻訳語としての「宗教」

 三 明治政府と「宗教」

 四 『百科全書』における「宗教」

 五 非「宗教」のカモフラージュ



第六章 「大英帝国」という近代──大日本帝国の事後的な語り

 一 遡及することば

 二 「大英帝国」とは

 三 「帝国」の記憶

 四 「人種」をめぐる大日本帝国

 五 更新され続ける「帝国」



第七章 「骨相学」という近代──他者を視るまなざし

 一 人体解剖図と翻訳

 二 西洋近代の「科学」

 三 「骨相学」とは

 四 語るまなざし

 五 疑似科学の近代



第八章 「物理」「化学」という近代──窮理と舎密からのフィクショナルな離脱

 一 蘭学から英学へ

 二 自然科学の翻訳

 三 「物理」「化学」への跳躍

 四 定義するテクスト

 五 学校制度のなかの自然科学



第九章 「百科全書」という近代──制度の流通と消費

 一 「百科全書」とは

 二 『百科全書』の視覚制度

 三 制度としての学知

 四 新聞広告による流通と消費



終 章 「翻訳」という近代──訳された文部省『百科全書』

 一 翻訳語の遠近法

 二 増殖する名詞

 三 翻訳論的転回へ



あとがき

文献一覧

事項索引

人名索引

長沼 美香子[ナガヌマ ミカコ]
愛知県生。通訳翻訳者。立教大学大学院異文化コミュニケーション研究科特任准教授を経て、神戸市外国語大学外国語学部英米学科准教授。広島大学卒業、同大学院修士課程修了。オークランド大学大学院文部省国費派遣交換留学。マッコーリ大学大学院修士課程修了。東京大学大学院総合文化研究科博士課程修了、博士(学術)。専門は機能言語学、通訳翻訳学。NHK『ニュースで英会話』原稿執筆、共編著に『日本の翻訳論』(法政大学出版局)、共訳書に『通訳学入門』『翻訳学入門』(みすず書房)ほか。

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