出版社内容情報
〈逆説〉と〈印象批評〉によって知られる批評家・小林秀雄を,日本の伝統的思考のすぐれた体現者とみなし,その文体を〈ことば自体〉の構造として分析・検討する。
内容説明
「どんなに正確な論理的表現も、厳密に言へば畢竟文体の問題に過ぎない」(『Xへの手紙』)という小林秀雄自身の文章の構造を、思考運動の二元的対立を表わすベクトル記号を用いて詳細に分析し、そこに日本的思想に特有の思考のモデルを発見する異色の文体論。小林の批評文に特徴的な「思考の飛躍」と「印象批評」に詩と批評の対立構造を読みとり、言葉の背後に隠された「論理」を浮彫にする。
目次
第1章 「詩」と「批評」(「詩」と「批評」とは等価である;「批評」についての小林秀雄の動揺;記号による分析方法について;小林秀雄の逆説)
第2章 「現実」と「観念」(「現実」と「観念」とはたがいに相対的である;「突然」ということばの思想的意味;何が「見えて来る」のか;小林秀雄の〈観念〉)
第3章 小林秀雄の思考の構造の分析(分析の方法;思考運動のモデル1;モデル1の解釈;『志賀直哉』論における困難;思考運動のモデル2;モデル2における〈観念〉発見の運動;典型的でない文章の分析)
第4章 『当麻』の構造の分析(前半における二つのモデル1;後半における二つのモデル2;分析結果を考える)
第5章 小林秀雄の思考の構造の意味