出版社内容情報
日本の秋の味覚を代表する柿は、海外でもKAKIとして通用し親しまれているが、日本人にとっては古来、単なる果樹ではなく「生活樹」であり、人びとと苦楽を共にする「同伴樹」でもあった。その深く豊かな歴史をたどり、調査・研究の発展をあとづけるとともに、栽培の技術、採取と脱渋(渋抜き)の方法から、「歯固め」や「成木責め」などの民俗・風習、神事とのかかわり、さらには柿渋や用材としての利用法までを明らかにする。
内容説明
人々と苦楽をともにしてきた生活樹としての柿の文化史。柿をめぐる調査・研究の発展をあとづけ、品種ごとの特徴、栽培の技術、採取と脱渋の方法から、民俗や風習、神事とのかかわり、さらには食用以外の多面的な利用法にもおよぶ。
目次
第1章 柿への誘い
第2章 歴史的な足どり
第3章 在来品種の調査と研究の発展
第4章 地域の暮らし・生業
第5章 年中行事とのかかわり
第6章 多面的な利用
付表 全国の柿品種の分布図(1・甘柿 2・渋柿)
著者等紹介
今井敬潤[イマイキョウジュン]
1949年、岐阜県に生まれる。京都府立大学農学部卒業。大阪府立大学農学部大学院修士課程修了。大阪府立農芸高等学校、同園芸高等学校教諭を経て、現在、大阪府立大学大学院客員研究員、岐阜女子大学非常勤講師。果樹園芸学専攻。学術博士。園芸学会、日本民俗学会、近畿民俗学会、日本民具学会、近畿民具学会の各会員(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
帽子を編みます
58
柿の文化史です。秋の味覚として身近な果物ですが、系統立ってまとめられた本として価値ある一冊です。柿に甘柿、渋柿があることが利用の方法を多岐に渡るものとして来たことがわかりました。渋の強烈さ、それを抜くための知恵、各種方法、干し柿は生の柿より保存がきくことで年貢や献上品としての価値も生まれました。多種多様な品種、人間との関わり、とばしながら読んだ部分も多いですが、驚きでいっぱいで人に語りたくなるような知識が全編にあふれていました。柿は日本の歴史上、実、葉、用材全てで優れた特性を持って利用されてきたのです。2021/12/24
鯖
17
柿渋について知りたかったんだけど、そっちはこのシリーズの115巻に独立してあった。渋を抜く方法として温泉につけるやつ面白いなあ。鹿児島の紫尾温泉では柿の渋抜き専用の浴槽まであって、柿の品種も考慮して皮が破けない程度に湯に浸ける。タンニンが舌のタンパク質と反応し、強烈な渋みを感じるので、アセトアルデヒドを果肉内に生じさせてタンニンを不溶化させ、舌のタンパク質との結合を阻害させれば甘くなるとのこと。2023/01/14