目次
ギョーム・ド・マショーとユダヤ人
迫害の常套形式
神話とは何か
暴力と呪術
テオティウアカン
アース、クレス、ティタン
神々の犯罪
神話の科学
福音書の受難を支配する言葉
ただひとりの男が死に…
バプテスマの聖ヨハネの斬首
ペテロの否認
ゲラサの悪霊たち
サタンの内部分裂
歴史とパラクレイトス
著者等紹介
ジラール,ルネ[ジラール,ルネ][Girard,Ren´e]
1923年南フランスのアヴィニョンに生まれる。パリの古文書学院、アメリカのインディアナ大学で学業を修め、同大学をはじめジョンズ・ホプキンズ大学、ニューヨーク州立大学などを経て1981年からスタンフォード大学のフランス語学・文学・文明の教授。独自の模倣理論・三角形的欲望理論・暴力理論をもとに、文学・社会学などの分野で注目すべき評論を行なっている
織田年和[オダトシカズ]
1949年生まれ。京都大学大学院文学研究科博士課程修了。フランス文学専攻。京都産業大学教授
富永茂樹[トミナガシゲキ]
1950年生まれ。京都大学大学院文学研究科博士課程修了。社会学専攻。京都大学人文科研究所教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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松本直哉
30
共同体は危機に見舞われた時、誰かに罪を負わせて迫害し、暴力をふるうことでふたたび結束を取り戻す。福音書の特異性は、身代わりの山羊としてのイエスを無罪としたことだった。実際、犠牲は冤罪なのだ。テーバイの町に蔓延する疫病の責任を問われたオイディプスもまた無罪だったのではないか。確かに父を殺し母と交わったが、彼はそれとしらずに罪を犯したのだから。今まさに蔓延中の疫病についても、犯人捜しをせずには気が済まないかのようだ。誰かを犯人に仕立て上げるのは自分の安全と正当性を確保するためだけなのではなかろうか。2021/04/24
かんやん
29
中世西洋の疫病禍にあって、井戸に毒を投げ込んだとしてユダヤ人が虐殺されたという詩が残っている(現代のヘイトクライムや関東大震災での朝鮮人虐殺を想起する)。ここからシンプルな身代り山羊仮説(危機にあって無実のマイノリティが迫害される)を作り、神話を読み解いてゆく。ここまでは興味深いのであるが、全ての、あらゆる神話と文化の起源、根源にこの迫害現象があるなどと言い出し(誇張でなしに!)、こじつけてゆくのだから、読んでいてイライラさせられる。どこかフロイトが仮説を普遍化させてゆく無理矢理感に似ている。愚作である。2021/09/20
34
17
以前『暴力と聖なるもの』を読んでいるときにパリの同時多発テロが起き、わがことのように混乱したのを覚えているが、こんどはロサンゼルスでの銃乱射事件。どうしても現実のテロルと関連づけて考えずにはいられない。が、そもそもジラールの言っていることは正しいのか。彼のミメーシス的な欲望のモデルには、暴力に歯止めをかける要素は内在的には含まれていない。このモデルからはほとんど論理的な必然性でもって破滅的なコンフリクトが導き出される。それを調停するのは、集団の成員全員一致でスケープゴートを立てての暴力の行使とされる。2017/10/04
またの名
6
黒死病の感染拡大を前にして生まれた群衆の恐怖心はユダヤ人が毒を飲み水に仕掛けてるという陰謀説へ膨らみユダヤ人を報復虐殺したが、後世には実際の事件を歪曲しファンタジー化した文学のみが残ったと大胆な仮説を提示。共同体が脅かされるとき普段の多様性は消滅し、全員一致で災いの原因として幻想される誰かを身代りに殺すことで秩序を取り戻す構造が、歪曲され書き込まれてると著者が見なす神話や伝承。これは明白な真理なのにインテリ常識人が妄想視して迫害してくると訴える弁明が大部分を占める本書は、マジで言ってるだけに取り扱い注意。2020/07/15