内容説明
ポピュリズムが跋扈する現実社会との対決から、新しい民主主義のための政治理論を創造する。「敵対性」、「転位」、「偶発性」、「ヘゲモニー」といった重要概念を理論的に定式化し、ポスト・マルクス主義からラディカル・デモクラシーに至る射程へその可能性を展開させる。シャンタル・ムフとの共著論文、精神分析理論と政治理論を節合させたスラヴォイ・ジジェクによる論考も付す。
目次
第1部(現代革命の新たな考察)
第2部(社会の不可能性について;精神分析とマルクス主義 ほか)
第3部 南アフリカについて(エルネストへの書簡(アレッタ・J・ノーバル)
アレッタへの書簡)
第4部 インタビュー(ニューレフトの形成;理論、民主主義、社会主義)
付録 言説‐分析を超えて(スラヴォイ・ジジェク)
著者等紹介
ラクラウ,エルネスト[ラクラウ,エルネスト] [Laclau,Ernesto]
1935年アルゼンチン生まれ(2014年没)。長年にわたって英国エセックス大学にて研究活動を展開。ポスト・マルクス主義およびラディカル・デモクラシーの理論家として知られる
山本圭[ヤマモトケイ]
1981年京都府生まれ。名古屋大学大学院国際言語文化研究科単位取得退学。博士(学術)。エセックス大学政治学研究科留学、日本学術振興会特別研究員などを経て、岡山大学大学院教育学研究科専任講師、国際基督教大学社会科学研究所研究員。専門は政治学、政治理論(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ラウリスタ~
7
「ポスト・マルクス主義およびラディカル・デモクラシーの理論家」ラクラウの論文をまとめて1990年にだされた英訳の翻訳。ソ連崩壊まえの論文だから、しごく真面目にマルクス主義の未来について書いてある。ただ、訳者後書きを読むまで、なにについて書かれたいるのか、ほとんど全く分からなかった。2015/05/20
34
6
現代哲学のミクロ・パラダイムがシュミットの「主権者」の概念に遡って見出せることを指摘し、それを現代政治の諸問題に適用した哲学者としてはアガンベンが有名だが、ラクラウ(およびムフ)はそれをマルクス主義のジレンマに適用してみせた。ラクラウはマルクス自身の著作にも見られる以下のジレンマを指摘する。①資本の発展から帰結する生産諸力と生産諸関係のあいだの矛盾(現象的には経済恐慌となってあらわれる)が、②資本家とプロレタリアートの階級対立(ラクラウの用語では「敵対性」)と論理的に同一視できない、すなわち①と②が必然的2016/11/04