出版社内容情報
日本の知的水脈において燦然と輝く2つの個性は、自然観と宗教観において多々共通点をもつ。これを表現・思想・人間関係のすべてにおいて比較対照する、類例のない斬新な考察。
内容説明
観察と詩情、直観的理解の高みへ。“自然観察と農民芸術”“熊野と花巻”“真言密教と法華経”異なる場所、異なる立場と手法で、それぞれに日本のスピリチュアリティの本質を見抜かんとした二人の驚くべき共通点とは?明治・大正期日本に燦然と輝く二つの知的巨星を比較対照する評伝!
目次
序章 二人のM・K―横一面男と縦一筋男
第1章 観察と聴取―五感の彼方へ・熊楠と賢治の超感覚
第2章 真言密教と法華経―二人のM・Kの宗教世界
第3章 一九一〇年の熊楠と賢治―ハレー彗星インパクトと変態心理学
第4章 妖怪学の探究と表現
終章 生態智を生きる道
著者等紹介
鎌田東二[カマタトウジ]
1951年徳島県生まれ。國學院大學大学院文学研究科神道学専攻博士課程単位取得満期退学。博士(文学)。岡山大学大学院医歯学総合研究科社会環境生命科学専攻博士課程単位取得退学。現在、京都大学名誉教授、上智大学グリーフケア研究所特任教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
あーびん
19
熊野の南方熊楠と花巻の宮沢賢治。ともに明治・大正期の日本を代表する知性ではあるけれど、この二人を比較するという発想はなかった。イニシャル以外の共通点はあるのか。賢治が『遠野物語』話者の佐々木喜善と交流していたというのは初耳。この時代は心霊や千里眼などの現象を新しい科学や心理学とする研究が活発だったので、知的探求心が旺盛な二人がそれぞれ違う方向性で興味を持っていてもおかしくはない。2021/08/15
浅香山三郎
9
「二人のM・K」、南方熊楠・宮沢賢治を同時代性に着目して比較し、1910年前後のスピリチュアリズム的な文脈の中で読み解く。「横一面男」と「縦一筋男」と言ひ示された二人の芸風はかなり違つてゐて、比較するといふ考へがなかつたが、分子生物学的な関心、宗教と自我への関心、或いは近代文明がもたらす事態(自然の破壊など)への危機意識など、同時代的に共通する面も大きいといふ。欧米の心霊研究やオカルティズム、神智学の流行と、熊楠の密教思想への関心、賢治の法華主義への没入が連関しあつてゐるといふ論点も興味深い。2022/11/04
町営バス
1
刺激的な本だった。南方熊楠と宮沢賢治の繋がりがスピリチュアル・仏教・自然の中から自然に生まれることに驚いた。世界全体を眺めるための一段高い思想が衆生に広まるためには、彼らはあまりにも愚直だったかもしれないが、その哲学は世紀を超えてニッポン人の魂を揺さぶるのである。2020/08/29