内容説明
臨床応用に向けて、研究はどこまで進んだのか?“オールジャパン”の体制は十全か?iPS細胞の今がわかる。
目次
1章 “ES細胞”は生命の起源にさかのぼる―一つの細胞からさまざまな臓器へ
2章 細胞が先祖返りしないわけ―なぜ万能性は失われていくのか?
3章 なぜ身体は古びないのか?―幹細胞は眠り、そして目覚める
4章 再生はいつも身体で起きている
5章 再生医療の時代へ
6章 iPS細胞が誕生した!
7章 再生医療レースのはじまり
8章 再生する力で人工臓器をつくる
終章 “知”がヒトを変えていく
増補1 iPS細胞研究の現在
増補2 オールジャパン体制へ向けて
著者等紹介
八代嘉美[ヤシロヨシミ]
1976年愛知県生まれ。慶應義塾大学総合医科学研究センター特任助教。2009年東京大学大学院医学系研究科病因・病理学専攻修了、博士(医学)。専門は幹細胞生物学。再生医療の倫理や社会受容の研究を通じ、「文化としての生命科学」の確立を試みている。また、新聞や雑誌、Web(SYNODOS JOURNALほか)などのメディアを通じて、幹細胞生物学の情報発信も行っている(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ネコタ
8
筆者曰く「研究者は一般の人たちへ情報伝達を行うのが得意とはいえない」なるほど。ということで基本的な事項からわかるiPS細胞についての入門書。2015/02/14
白義
4
ES細胞からiPS細胞までの流れと、生命科学的な基本をしっかり押さえられる。科学的な解説が丁寧なだけではなく、iPS細胞がいかに人間と科学のあり方に問いを投げ掛けるかをSFまで引いて考察したり、日本の研究支援やiPS細胞に関する報道姿勢は今のままでいいのかという問題意識も強く、バランスに富んだ冷静な知見を得ることが出来る良書になっている。iPSに関するニュースは、どれも奇跡か神業かとか、パンドラかというような派手な部分が注目されるが、iPSはまだまだ生命科学の新しい扉の前に人々を連れ出した段階なのだろう2012/10/12
まるさ
3
iPS細胞の入門書。前半でiPS細胞の前身となるES細胞の研究を生物の基礎知識を踏まえつつ、またES細胞の作成において生じる生命倫理の問題が存在することを紹介している。後半ではiPS細胞では生命倫理の問題を(厳密にではないが)クリアし、尚且つ幅広い応用性を持つこと紹介していた。ただ前半部分のES細胞の解説は丁寧にわかりやすく解説してあるのに比べ本書の増補部分の中には高校生物の知識を前提としている部分が散見されるのが少し残念。著者の科学研究への熱い思いは伝わった。2015/11/13
Yoshie S
3
文系女子の私にも取っつきやすい内容だった。細胞の未知の部分の研究はどんどん進んで行くが、倫理の問題もあるなと痛感。この先の展望、現状を踏まえてどう活用していくのかが課題だと思った。2014/09/13
hornistyf
3
iPS細胞に関する報道姿勢への苦言のところは、自分にも耳が痛い内容であった。私も研究者の一員であるからには、私は分野外だから、なんて言い訳は通用しない。報道を鵜呑みにせず、原著論文を注意深く読み、iPS研究全体の中での、その論文の位置づけを的確につかめるようにならなければならない。2012/04/22