出版社内容情報
浅田次郎[アサダ ジロウ]
著・文・その他
内容説明
奥多摩の御嶽山にある神官屋敷で物語られる、怪談めいた夜語り。著者が少年の頃、伯母から聞かされたのは、怖いけれど惹きこまれる話ばかりだった。切なさにほろりと涙が出る浅田版遠野物語ともいうべき御嶽山物語。
著者等紹介
浅田次郎[アサダジロウ]
1951年東京生まれ。95年『地下鉄に乗って』で吉川英治文学新人賞、97年『鉄道員』で直木賞、2000年『壬生義士伝』で柴田錬三郎賞、06年『お腹召しませ』で中央公論文芸賞および07年に司馬遼太郎賞、08年『中原の虹』で吉川英治文学賞、10年『終わらざる夏』で毎日出版文化賞、17年『帰郷』で大佛次郎賞を受賞。15年には紫綬褒章を受章した(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
しんごろ
234
神秘的!幻想的!水墨画の世界に入りこんだ感覚です。読んでる最中、何度か睡魔に襲われ、まるでちとせ伯母の話を、読んでる自分にも話を聞かせてるんだという気持ちになりました。ただ、この作品は体調が悪いとき、疲れがたまってるときに読むべきではないな。いくつかの話は入りこめなかった!たぶん、ちとせ伯母に、つまらなかったら、寝ていいし、無理して聞かなくてもいいんだからねと読んでる自分にも言ってるのかな…。とにかく不思議な感覚で読了しました。入りこめなかった話は、静かな環境の中で再読したいと思います。2018/06/07
ちょろこ
129
もう少し浸っていたかった、一冊。少年が幼少時に見聞きした物語。静かな文章と共に御嶽山に連れ出され、喧騒とはかけ離れた世界に身も心も連れて行ってもらったような時間だった。魂の訪い、神、天狗…怖さなんて感じない。すぐ隣にあるような、ごく自然で当たり前に感じられること。それらにはむしろ神聖な気持ちしか感じない。心がさらさらとこの話を取り込んで受け入れ、その後を追うように清らかな水が心に流れ込むようなそんな感覚。そして自然と背筋が伸びていく不思議な感覚。もう少しこの世界に、時間に浸っていたかったな。2020/02/04
あすなろ
111
浅田氏母君の故郷である御嶽山をモチーフに複数の実話を下敷きに浅田氏が物語った連作短編集。そこは、神上る霊魂と地上に生まれる霊魂がすれ違うかのような場所。狐憑きの物語も霊魂彷徨う者達も浅田氏の聞き書きのような体裁で物語られるとグッと引き込まれるのである。一昔前前の日本の一部を切り取り語りおろしたかのような怪奇譚であるが、素敵な作品であった。こういう世界観も触れておいて良いのでは、と思う。2021/08/15
chantal(シャンタール)
91
浅田さんの母方のご実家が御嶽山の御神職だそうで、子供の頃聞いていたお話を脚色した物語は確かに「遠野物語」を彷彿とさせる。東京にもこんな山深い所があるのだなあと感慨にふけると共に私の思い出も蘇る。父実家のお寺は小高い山上にあり、昔は車で上がる事が出来ず、竹藪に囲まれた長い石段を登らねばならなかった。墓地から見下ろす田んぼの風景は今でも変わらないが。夏休みにはいとこ達も集まり境内で遊んだり墓地で肝試しをしたり。このお話のように山や森に宿る八百万の神の存在を感じる事が出来る自然がいつまでも残る事を願っている。2020/02/21
おかむー
90
ホラーとも怪奇幻想ともまた違う、奥多摩の御岳山を舞台とした神秘と畏れの短編集は、物語によっては脚色もあれど著者自身が神官である伯父や伯母などから伝え聞いた実話と知ってまた感慨深い。『よくできました』。著者の実母の生家である武蔵御岳神社の神官であった曾祖父やその娘の祖母、伯父などの経験と、伯母が子供たちへの寝物語として語ったのは、怪談のようでもあり神秘とヒトの情、そして人ゆえのほのかなもの悲しさを感じさせる静かな物語。2018/05/20