出版社内容情報
「第九」アジア初演の地、徳島県鳴門市板東。板東に転校してきた愛子が、「第九」の歴史や当時の人々の想いに触れ、成長していく物語。
くすのきしげのり[クスノキシゲノリ]
著・文・その他
古山拓[フルヤマタク]
イラスト
内容説明
1918年6月1日、徳島県鳴門市の板東俘虜収容所―。ドイツ兵俘虜たちによって、ベートーベン交響曲「第九」がアジアで初めて全国演奏されました。主人公の転校生・愛子に、おばあちゃんが伝えたかったこととは…。語りつぎたい感動の物語。
著者等紹介
くすのきしげのり[クスノキシゲノリ]
1961年生まれ。鳴門教育大学大学院修士課程修了。小学校教諭、鳴門市立図書館副館長等を経て、作家として児童文学を中心とする創作活動と講演活動を行っている
古山拓[フルヤマタク]
1962年、岩手県生まれ。東北学院大学史学科卒。アニメーターを経たのちイラストレーターとして独立。アトリエギャラリー・アルティオ主宰(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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みーちゃん
37
この本では、戦争のとき日本と戦い負けたドイツ人の人たちが、板東俘虜収容所と言うところに送られました。でも、そこにはたくさんの自由がありました。例えば、当時海水浴など規則では、絶対してはいけませんが、「足を洗っている勢いで海水浴をしてしまうのなら、しょうがないな。」と海水浴を許してしまったりします。絵本なので、とても読みやすかったです。2019/11/22
ヒラP@ehon.gohon
23
年末に歌われる交響曲「第九」が日本で初めて歌われた事と、ドイツ兵俘虜収容所との関わり、それが百年も昔の出来事だったことを初めて知りました。 収容所というと過酷な生活を想像するのですが、なんともおおらかな、ひとつの文化圏のようにして存在したことにも驚きを感じました。 図書として紹介されていたならば、たぶんたどり着くことのない史実と、絵本を通して巡り会うことのできる幸せを感じた一冊です。 絵本はいろんな出会いを作ってくれます。2020/03/31
ヒラP@ehon.gohon
21
【再読】日本で、なぜ交響曲「第九」が歌われるようになったのか、知らなかったエピソードに触れることが出来ました。2021/12/28
ほんわか・かめ
18
憎しみは憎しみを生む。愛は愛を、信頼は信頼を生む。板東俘虜収容所の松江所長のドイツ兵の人権を尊重した行動が素晴らしい。その信頼に応えようと、自らに制約を課すという自由を選んだドイツ人俘虜もまた素晴らしい。第九が日本で初めて演奏されたのは福岡だと思っていたが、日本(アジア)での初演奏(収容所内だったため一般の日本人は聴いていない)が板東のようだ(1918年6月)。久留米に収容されていたドイツ兵捕虜による演奏で一般の日本人が初めて曲を耳にしたのが1919年12月だそう。2022/11/26
遠い日
15
ドイツ兵の捕虜たちを守り抜いた徳島県の板東俘虜収容所の実話。人権を尊重し、ドイツ兵の自由を保護した所長、松江豊寿。人は人としてどう生活すべきかを、全き信念を以て周囲に理解させていった松江の功績はことばに尽くし難い。このドイツ兵たちが、自分の持てる能力を発揮し、収容所でありながら選び取れる自由を遺憾なく謳歌できたことの奇跡。敵であったという軋轢を断ち切った英断の上に成ったすばらしいできごと。2018/06/30