ゼーバルト・コレクション
土星の環―イギリス行脚

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  • サイズ B6判/ページ数 289p/高さ 20cm
  • 商品コード 9784560027318
  • NDC分類 943
  • Cコード C0097

内容説明

何世紀もの破壊の爪痕をめぐる。

著者等紹介

ゼーバルト,ヴィンフリート・ゲオルク[ゼーバルト,ヴィンフリートゲオルク][Sebald,Winfried Georg]
1944年、ドイツ・アルゴイ地方ヴェルタッハ生まれ。フライブルク大学、マンチェスター大学などでドイツ文学を修めた後、各地で教鞭をとった。やがてイギリスを定住の地とし、70年にイースト・アングリア大学の講師、88年にドイツ近現代文学の教授となった。散文作品『目眩まし』(90年)、『移民たち 四つの長い物語』(92年)、『土星の環』(95年)を発表し、ベルリン文学賞、ハイネ賞など数多くの賞に輝いた。遺作となった散文作品『アウステルリッツ』(01年)も、全米批評家協会賞、ブレーメン文学賞を受賞し、将来のノーベル文学賞候補と目された。2001年、イギリス・ノリッジで自動車事故に遭い、他界した

鈴木仁子[スズキヒトコ]
1956年生まれ。名古屋大学大学院博士課程前期中退。椙山女学園大学助教授。翻訳家(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

ケイ

130
副題の通り、まさにイギリス行脚の旅。行脚であるから…だろうか、色々なものに目をとめる。目にしたものから思考は繋がり、広がり、別の土地での体験、出来事、そこに関係のある歴史上の人々について語られる。陰鬱ではないが決して明るくはない。過去にあった数々の戦い、破壊、人々の味わった悲しみなどを、この著者は自分の痛みとして感じている。私もそういうところがあるので、後半はのめり込まないで読んだ。彼が景色を見て想うこと…、帰するはすべて諸行無常である。鏡にかけれらる黒いヴェールを、閉じたこの本にそっとかけたくなる。2016/05/30

NAO

65
荒涼とした風景の中を、ほとんど出会う人もなく、とぼとぼ歩いて、語り手は、ひたすら思考の中に閉じこもっている。彼が目にしたものから思いおこす人たちは、この世の中で生きにくい思いをした人物ばかりだ。この世に慣れることができないからこそ、いつまでも過去にこだわり、戦争の跡を見ずにはいられない。語り手が何度も引き合いに出すブラウンの考え方は、そのまま語り手の考え方でもあるのだろう。それは、醒めた目をした異邦人の、宇宙人の視線なのかもしれない。2017/12/23

zirou1984

49
恍惚と喪失はいつも隣り合わせの場所にいる。彼岸の景色には陶酔の遺香が満ちている。それは人を惑わせる自意識の誘惑だが、ゼーバルトはそうした憐憫に足を躓けることなく、歴史という災厄に、過去の亡霊たちに向き合い続けてる。イギリスの沿岸部を旅し、歴史の欠片に触れながら思うのは収容所の悲劇、コンゴにおける非人道的扱い、中国の戦乱、そして悲劇的な人生。目の前の景色が、私たちの歴史が廃墟になる前にそれを繋ぎ止めようとする、懸命なまでの言葉と写真の数々。想像力の可能性、それは誰にも奪い去れない風景を私の中に届けてくれる。2016/07/07

市太郎

47
イギリス、サフォーク州の徒歩旅の記録、記憶。純粋な旅行記ではない。随筆でもないし小説でもない。これはゼーバルトの本だ。彼が生み出し得る特別で最高峰の文学。廃墟的な文体、空間や脱線していく逸話の数々、改行を忘れたかのような密度の濃い文章は馴染めず合わないと思ったが違った。是は素晴らしい書物だった。読む者を語り手の意識下のもと、あらゆる場所に誘ってくれる。何年かかっても必ずまた読む。2013/12/10

Tonex

26
『土星の環』というタイトルからは想像もつかないが、旅行記(のような小説)。解説=柴田元幸。▼イギリスの田舎。徒歩の旅。不思議な文章。回想がどんどんズレていき、いったい何の話だったのかわからなくなる。今回はとりあえず斜め読みだが、再読したいと思える一冊。▼本書にもカフカが登場する。語り手が病院の窓から外を眺める際に、『変身』で虫になったザムザが窓の外を眺める姿と重ね合わさせる。また、船乗りとしてコンゴへ行ったコンラッドの話の中で、同じくコンゴに行ったヨーゼフ・レーヴィ(カフカの母方の叔父)の名前が出てくる。2016/03/02

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