内容説明
巨大地震と大津波、そして原発事故に見舞われた福島県。南相馬市の仮設住宅に暮らす老夫婦に、笑顔の花がときおり咲きます。孫の歩未ちゃんが会いに来るからです。2011年3月11日の大地震に発生直後、まちの人ほとんどが避難していきました。今も、子どもの半数は戻ってきていません。歩未ちゃんのじいやん、ばあやんのお家もなくなりました。先が見えない暮らしのなか、がんだったじいやんは旅立つとき、歩未ちゃんに、贈り物を手渡しました。心をこめた「いのちのバトン」です。歩未ちゃんとばあやんはお返しに、大切にふきこんだシャボン玉を空へ贈りました。
著者等紹介
國森康弘[クニモリヤスヒロ]
写真家、ジャーナリスト。1974年生まれ。京都大学経済学研究科修士課程修了、神戸新聞記者を経てイラク戦争を機に独立。イラク、ソマリア、スーダン、ウガンダ、ブルキナファソ、カンボジアなどの紛争地や経済貧困地域を回り、国内では、戦争体験者や野宿労働者、東日本大震災被災者の取材を重ねてきた。「あたたかで幸せな生死を伝えること」「いのちの有限性と継承性」をテーマに、近年では看取り、在宅医療、地域包括ケアの撮影に力を入れ、滋賀・永源寺地域の花戸貴司医師らに同行取材している(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
kinupon
23
いのちつぐ「みとりびと」シリーズの第2弾です。今回は震災と原発事故の福島県です。どこにいても看取りをするということは切ないです。最後に歩未ちゃんの笑顔に未来を感じるのは私だけでしょうか。2014/06/12
pocco@灯れ松明の火
15
南相馬市の歩未ちゃんの傍には、きっと居る>「じいやん、ねんね」>じいやんとあゆみちゃんの会話は、まだまだ続いていると思う。また、ばあちゃんにも、その会話はき聞こえているだろう。 仮設から卒業し、少しでも早く、普通の生活が送れる安心が頂けます様に。祈2014/07/03
ヒラP@ehon.gohon
14
運命ということを考えさせられる本です。 東日本大震災で助かった命も、仮設住宅で生涯を終える人がいます。 あの日一緒に暮らしていたら、犠牲になったかもしれない孫がいます。 病気のために一生を終えたおじいさんは、幸せなのかなと思いました。 人生の終わり方って、とても大切かも知れません。 歩未ちゃんとおばあちゃんは、おじいちゃんからどんなバトンを受け取ったのでしょうか。 児童書にして、とても根源的なことを語っている写真絵本でした。2017/08/03
遠い日
8
「いのちつぐ「みとりびと」」シリーズ5。東日本大震災のその後の人生。福島県南相馬市の仮設住宅での暮らしと病を得た体。幼い孫の歩未ちゃんに祖父が渡したバトン。すくすく成長する歩未ちゃんはその小さな胸にじいやんの面影を、きっと宿している。じいやんの無念が切ないけれど、しっかりと歩未ちゃんに託したものは育っていると思います。2021/02/28
びすけっと
7
2014年1月刊。読友さんつながりで知りました。東日本大震災で津波に被災し、いまは南相馬市の仮設住宅に身を寄せている老夫婦と孫の歩未ちゃんのものがたり。がんの夫を看取る「ばあやん」が語ります。震災関連死が直接死より上回った。大変な思いをしている人へお金を回す枠組みが国では無いだろうか。国を運営する代表を選んでいるのは私たち一人ひとりだけれど。p.9のじいやん、歩未の向こう側のばあやんの笑顔がとても印象的でした。その人らしく物語が閉じられるよう、施策を作らねば。それにしても、写真がすばらしい。2014/05/16