出版社内容情報
日本が初出場したワールドカップ98フランス大会では,開催国のフランスが初優勝を飾ったことは記憶に新しいことと思います。フランスがすばらしい成績を残したのには,技術,戦術やフィットネスの高さはもとより,コンディショニングが他の強豪国より良かったと思われます。一月間にも及ぶ大会期間中に厳しいゲームを何試合も行なうワールドカップは精神的,肉体的な消耗は相当なものと想像されます。そのなかで良い成績を残すにはいかに良いコンディショニングを維持していくかも重要な問題です。優勝候補に上げられたいくつかの強豪国でコンディショニングの悪さで期待どおりの活躍ができなかった国もあります。コンディショニングを成功させる基本的な条件は,栄養,休養,トレーニングの3つのバランスです。この3つのバランスを常に意識しながら,選手たちの状態をより良い方向に持っていくことが重要です。ゲームのために良いコンディショニングを作ることはもちろんのこと,トレーニング期間中においても,いかにコンディショニングを整えて望むかが重要です。コンディショニングを無視して,単に疲労困ぱいするまでトレーニングすれば良いというものではありません。間違ったトレーニングでは無駄な時間を使うばかりか,故障を起こしたり,サッカーに対する情熱を失わせることさえあります。サッカーの特徴を知り,ゲームでもトレーニングでも最良のコンディショニングで行なうことで始めて効果が大きくなります。ハードにトレーニングをすれば,より高い効果があると思い込んでいる古いタイプのコーチや指導者に指導される選手ほど不幸なことはありません。サッカーの特徴を知り,栄養や休養をうまく取り入れ,良いコンディショニングで科学なトレーニングを行うことこそ,良い選手,良いチームにつながるのです。
そこで今回の「サッカーコンディショニングの科学」では,運動の3要素であるトレーニング,休養,栄養のうちコーチや監督からは,軽視されがちな休養と栄養を中心に執筆することになりました。
最後にサッカーを科学し,効率良く上達するための「サッカーおもしろ科学」,効率良くゴールを奪い勝利するための「サッカーゴールへの科学」,選手強化のための「サッカーフィットネスの科学」に続き,トレーニング効果を最大にし,ゲームで良い結果を残すために選手やチームの基本である「コンディショニング」について出版の機会を与えてくださった東京電機大学出版局の植村八潮氏ならびに橘内文氏のご好意に対し,心より感謝申し上げる次第であります。
平成11年5月吉日
著者記す
第1章 コンディショニングの科学的原理
1-1 コンディショニングの定義
1-2 コンディショニングの目的
1-3 栄養・休養・トレーニング
1) スポーツと休養
2) スポーツと疲労の意義
1-4 慢性疲労の予防と疲労回復法
第2章 科学的分析に基づいたコンディショニング
2-1 コンディションと運動量
2-2 筋肉中のグリコーゲンと運動量
2-3 食事内容とコンディション
2-4 暑さや高所の影響
2-5 ワールドカップ最終予選,日本代表の4試合
2-6 中田選手のデータ
2-7 疲労回復
1) 疲労回復
2) 栄養・休養あってのトレーニング効果
3) 睡眠不足
4) 精神的な疲労
5) 疲労回復の方法
2-8 合宿
1) 合宿とは
2) 体調管理
3) 管理方法
4) 疲労度を知る
2-9 ウエイトコントロール
2-10 リハビリテーション
1) 復帰の指標
第3章 コンディショニングに役立つ食事のはなし
3-1 サッカー選手のタフなカラダ作りは食べることからはじまる
1) 成長期のサッカー選手の骨を強くする
2) サッカー選手の貧血はスタミナ低下の原因となる
3) 朝食をとることは練習よりも優先される
3-2 サッカー選手の食事ルール
1) 栄養フルコース型食事スタイルをマスターしよう
2) カラダに関係のある栄養素
3) ではどのくらい食べればいいのか
4) 間食はカラダ作りの栄養を補う4回目の食事です
5) 栄養補助食品を活用して栄養フルコースメニューをつくろう
3-3 サッカー選手の目的別食事ポイント
1) 筋力アップ・瞬発性の強化
2) スタミナの強化
3) リハビリ中の食事テクニック
4) 水分補給の第1歩は体重の変化を知ること
5) 試合に向けての食事テクニック
内容説明
最高のゲームをするためには、最良のコンディションでのぞむ必要があります。本書では、ゲームの科学的分析データによって、コンディションの重要性を示すとともに、休養や栄養といったこれまで見逃されていた重要なことが具体的に述べられています。
目次
第1章 コンディショニングの科学的原理(コンディショニングの定義;コンディショニングの目的;栄養・休養・トレーニング ほか)
第2章 科学的分析に基づいたコンディショニング(コンディションと運動量;筋肉中のグリコーゲンと運動量;食事内容とコンディション ほか)
第3章 コンディショニングに役立つ食事のはなし(サッカー選手のタフなカラダ作りは食べることからはじまる;サッカー選手の食事ルール;サッカー選手の目的別食事ポイント)