大学eラーニングの経営戦略―成功の条件

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大学eラーニングの経営戦略―成功の条件

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  • サイズ A5判/ページ数 209p/高さ 22cm
  • 商品コード 9784501539009
  • NDC分類 377.15
  • Cコード C3037

出版社内容情報

はじめに
 社会の諸事情に「e」を付けて表現することが増えてきた。教育であれば「eラーニング」,商業取引であれば「eコマース」,行政分野であれば「eガバメント」といったタームがそれである。この「e」はインターネットを介してそれぞれの活動を行うことを意味している。インターネットを便利な道具として利用している間は,おそらくこうした言葉は必要ないであろう。しかし,インターネットを介したことによって,従来の仕事のやり方や成果の問われ方が異なって,仕事を支える構造が変化する予兆をみたとき,「e」が特別の意味をもつ。
 IT化なりIT革命なりがさほど声高に語られなくなり,いつの間にかメールやネットは日常の片隅にその場を確保している。しかし,「e」の方は,まだ,新鮮味をもって語られているのは,それが,まだ,日常に十分に位置づいていないからであろう。
 本書は,これらの「e」のうち日本の大学の「eラーニング」に焦点をあて,いくつかの事例を詳細に検討することで,それを可能とする条件を探ることを目的とする。大学の世界においては,それでも「eラーニング」は比較的馴染みのある言葉である。しかし,それがどこでどのように実施されているのかという基礎情報や,「成功」の類に分類されるeラーニングはどこで行われているのか,何が「成功」の条件なのかなどについては,驚くほど知られていない。「eラーニング」はそれほどに実態を伴っていない言葉であり,また,逆に,それほど関心を引く言葉でもあるのだ。
 本書で扱うeラーニングは,単位認定される授業として行われるものを対象にしており,わが国では最も先進的な事例である。大学の諸活動をIT化していく,すなわちITを便利な道具として利用している段階を超えて,インターネットを介して正規の授業を実施するという意味での「eラーニング」に至るには,そこで超えねばならない大きなギャップがある。遠隔教育の伝統をあまりもっていないわが国の場合,eラーニングは遠隔教育が一層効率的で便利になった形態としてみられるのではなく,教室における対面授業と比較して効果があるか否かが問われることが多い。大学設置基準によって単位認定するeラーニングが規定されるとき「対面授業と同等の効果をもつ」ための工夫が必要と特記されたことが,それをよく表しているといってよい。したがって,授業をインターネットで配信し単位認定することに対しては,二の足を踏む大学が多いのである。
 それなのになぜあえて単位認定するeラーニングを実施し,一定の成果を出しているのか,その秘訣を探ることは,研究の上でも,eラーニングに興味関心を抱いている大学にとっても有益だと考える。
 本書は4部構成となっているが,第Ⅰ部「IT化とeラーニングの概況」に相当する第1章は,わが国の大学がどの程度IT化し,eラーニングをターゲットにしているかを,全国調査の結果をもとに検討したものである。
 この鳥瞰図をもとに,第Ⅱ部「国内大学eラーニングの成功事例」における第2章から第6章は,単位化したeラーニング授業を実施している5つの大学の事例分析を行った。具体的には,東京大学,玉川大学,青山学院大学,佐賀大学,東北大学,であり,これらを選定したのは国立と私立,東京周辺と地方,大規模と小規模などの要因を考慮した結果である。それぞれの大学には,(1)eラーニングを始めた経緯,(2)コスト,(3)ハード面でのシステム,(4)単位化している科目の内容,(5)実施した結果(教育効果,学習効果),(6)課題と展望を含むことを条件として自由に記述していただいたが,われわれが分析のキーワードとしているのは,「技術」,「コスト」,「教育効果」の3つである。この3点に焦点を絞ったのには訳がある。大学設置基準においてすでに2001年よりeラーニングは制度化され,技術的にもかなり高度なレベルでそれが実施できることは知られているにもかかわらず、実際にはeラーニングを積極的に実施する高等教育機関が増加していない。その理由としては,「技術」に加えて「コスト」,「教育効果」の問題が十分に検証されていないからだと思われるからである。安定した技術で確実に,さほどコストをかけずに,目的とした教育効果をあげられる教育をどのように提供できるか,この3変数の関係に,eラーニングを実験から実践へと移行させる鍵があると考えたからである。
 個々の機関を少しだけ紹介すれば,東京大学からは,eラーニング・サイト「iii Online」を中心に,「eラーニングによる教育と社会サービス」について知ることができる。社会人大学院生を多く抱える東京大学大学院情報学環・学際情報学府が,時間と空間を縛らないかたちで学習機会を提供し,かつ社会サービスの一環として大学の智を公開するためのサイトである,iii Onlineの稼動状況の概要や,質問紙調査等の結果,また,運営のための組織づくりやティップスが読み取れるだろう。
 玉川大学には,「個別学習による学力の質の保証」について報告していただいた。教育戦略として全学的なICTの利用に取り組んできた玉川大学であるが,「いつでもどこでも」学習できる教育環境を整備し,対面授業にはないeラーニングならではの学習を目指してきたその導入の経緯や実践例,アンケート調査からみる実態や評価,システムを支える学内環境とスタッフの役割が中心になっている。また新たなラーニング・マネジメント・システム導入のプロセスについても詳しく述べられている。
 青山学院大学は,eラーニングによって既存の「学び」を打破し,「ITによる教育改革」を目指している。ここでは,青山学院大学が中心になって推進してきた2つのeラーニング・プロジェクトで蓄積された成果をもとに,人文系学部や大学院におけるeラーニング実施上の問題点と解決法など,「学生参画型授業の国際展開」について報告されている。
 佐賀大学は,2002年度から全学必修の教養教育をいかに効率的・効果的に実施するかという問題をeラーニングで解決することを目指した。この「全学必修の教養教育の効率化」を目指し,資金が潤沢にない中,直面する多くの問題を知恵と工夫で乗り切ってきた具体的な話は,わが国の大学の典型を見る思いがある。
 15研究科のほか,多数の研究所とセンターをかかえる東北大学。それぞれに目的,eラーニングに対する考え方,対象,講義形態が異なる中,東北大学は,「総合大学における全研究科規模のeラーニングをどのように統一あるものにしていこうとしているのか。2年目を迎えたISTUの運営の具体策を報告してもらった。
 第Ⅲ部の7章と8章は,eラーニングを先行させているアメリカにおいて,それを成功させている要因を探ることを目的として,7章は,日本ではまだあまり汎用性をもっていないeラーニング技術の現状を,8章は,大学組織としてより安定的なeラーニングを提供していく上では何が必要かを分析している。
 第Ⅳ章の9章は,5大学の事例を通して,技術・コスト・教育効果―がどのように書き込まれているか,それぞれ読みくらべていただきたい。
 このように,eラーニングを成功させる条件を探っていくと,自然とその逆のeラーニングが普及しない要因や支障となっていて問題に突き当たる。本書の隠されたもう一つのねらいが,そこにあることを付記しておきたい。

 2005年2月
 吉田 文


第Ⅰ部 IT化とeラーニングの概況
 1章 進むIT化と進まぬeラーニング
  1 日本の大学のIT化は遅れている?
  2 大学教育のIT化
  3 ITによる教育内容の配信
  4 ITによる授業の配信
  5 学内のIT戦略と組織構造

第Ⅱ部 国内大学eラーニングの成功事例
 2章 eラーニングによる教育と社会サービス  東京大学
  1 情報学環とiii Online
  2 iii Online―3つの目標
  3 iii Onlineの概要
  4 iii Onlineの組織
  5 アンケート調査の結果から
  6 アクセスログの分析から
  7 研究の発展
  8 実施にあたって困難だった点
  9 コストとメリットのバランスと将来課題
 3章 個別学習型eラーニングの実践とシステム評価  玉川大学
  1 eラーニング・システム導入の経緯と発展
  2 システム・スタッフの役割
  3 新たなプラットフォームの選定に向けて
  4 BlackboardとLearningSpaceの比較
  5 LMS評価の結果と今後の計画
 4章 産官学のアライアンスによる実践教育と教育国際化を目指すeラーニング  青山学院大学
  1 はじめに
  2 eラーニングの障壁
  3 eラーニングの「3ない」阻害要因の克服
  4 AMLプロジェクトのねらいと研究テーマ
  5 AMLプロジェクト運営のための制度,ヒト,モノ(+技術開発),カネ
  6 プロジェクト活動によるeラーニング正規授業の実践
  7 産官学共同研究と教育の国際化を推進するA2ENプロジェクトの展開
  8 おわりに
 5章 eラーニングによる教養教育と生涯学習  佐賀大学
  1 ネット講義をどのように始めたか
  2 ネット講義実験サイトの構築
  3 ネット講義スタート(2002年度前期)
  4 ネット講義の状況(2002年度後期)
  5 2年目を迎えたネット講義(2003年度)
  6 ネット講義の新たな展開
  7 生涯学習としての活用
  8 eラーニングへの期待
 6章 全学規模による大学院講義のインターネット配信  東北大学
  1 はじめに
  2 ISTU立ち上げ時における課題
  3 「大学院教育情報学研究部・教育部」の同時開設
  4 ISTUにおけるコンテンツ作成の実際
  5 ISTUの現状
  6 おわりに
第Ⅲ部 先進地アメリカからの示唆
 7章 eラーニングを支えるテクノロジー
  1 はじめに
  2 どんなシステムがあり,利用されているのか
  3 LMSとは何か?―混乱していくテクノロジーの名称
  4 標準化とコンテンツの流通
  5 CMSによるeラーニング・サイト運営の可能性
  6 eラーニング・テクノロジーの近未来―アメリカの事例
 8章 eラーニングを支えるスペシャリスト
  1 はじめに
  2 出版モデルによるコースの開発
  3 リエゾンという役割
  4 スペシャリストをどこで育てるのか
第Ⅳ章 キーワードの検証―成功の条件
 9章 技術・コスト・教育効果とその先にあるもの
  1 なぜ技術・コスト・教育効果なのか
  2 技術・コスト・教育効果の検証
  3 日本のeラーニングの特徴
  4 経営戦略としてのeラーニング
  5 eラーニングのグランド・デザイン

おわりに

内容説明

国内大学の成功事例を「技術・コスト・教育効果」の観点から分析し、IT化時代に生き残るための大学戦略を解き明かす。

目次

第1部 IT化とeラーニングの概況(進むIT化と進まぬeラーニング)
第2部 国内大学eラーニングの成功事例(eラーニングによる教育と社会サービス―東京大学;個別学習型eラーニングの実践とシステム評価―玉川大学;産官学のアライアンスによる実践教育と教育国際化を目指すeラーニング―青山学院大学;eラーニングによる教養教育と生涯学習―佐賀大学;全学規模による大学院講義のインターネット配信―東北大学)
第3部 先進地アメリカからの示唆(eラーニングを支えるテクノロジー;eラーニングを支えるスペシャリスト)
第4部 キーワードの検証―成功の条件(技術・コスト・教育効果とその先にあるもの)

著者等紹介

吉田文[ヨシダアヤ]
東京大学大学院教育学研究科博士課程修了(教育社会学)(1989年)。放送教育開発センター(現・メディア教育開発センター)助教授(1989~2002年)、カリフォルニア大学バークレイ校客員研究員(1995~1997年)、メディア教育開発センター教授(2002年~現在)

田口真奈[タグチマナ]
大阪大学大学院人間科学研究科博士課程修了、博士(人間科学)(1999年)。京都大学高等教育教授システム開発センター(現・京都大学高等教育研究開発推進センター)研修員(1999~2000年)、メディア教育開発センター助手(2000~2003年)、同助教授(2003年~現在)、ハーバード大学デレッグボク教授学習センター客員研究員(2003~2004年)

中原淳[ナカハラジュン]
大阪大学大学院人間科学研究科博士課程中途退学(2001年)、博士(人間科学)(2003年)。メディア教育開発センター助手(2001年~現在)、マサチューセッツ工科大学客員研究員(2004年)、東京大学大学院情報学環客員助手(2004年~現在)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。