出版社内容情報
メーカの工場で作られた製品は,流通機構を経て消費者の手に渡り,その役目を終えると廃棄物になる。最近,メーカは,生産工程から廃棄物処理に至るすべてに責任を負わねばならなくなってきた。この背景には,地球規模の環境問題があり,生産工程や製品の省エネルギー化廃棄物の再利用を考慮した設計などが求められている。
このような状況下のFA(Factory Automation)の現場において,プログラマブルコントローラとその周辺装置,およびパソコンの活用は,生産工場の自動化省エネルギー化を准し進め,安全で快適な工場を作る一つの要因になっている。
コンピュータによる機械の制御には,ワンボードやワンチップによるマイコン制御,パソコンの拡張ボードを使用したC言語やBASICなどの高級言語による制御,およびプログラマプルコントローラによる制御などがある。このうち,パソコンの拡張ボードを使用した制御は,パソコンの高性能化とともに拡張ボードが使えなくなり,今後減少していくであろう。このような情勢で,プログラマプルコントローラによる制御は,FA分野はもとより,今後,娯楽・介護・サービス産業など,非FA分野にも利用されることが予想され,研究対象として面白い。
私がこの本を書くきっかけとなったのは,2年ほど前に巻末に記した会社から,オムロン株式会社製のプログラマプルコントローラCQM1を1台いただいたことにある。パソコンの拡張ボードが使えなくなっていくなかで,これからの機械制御はプログラマブルコントローラが有望ではないかと考え,入出力実験装置を作ることから始まった。幸い,制御対象である教材用のベルトコンペヤは,私の所属する神東川県工業教育研究会機械部会の計測・電気分科会で一人1台作ってあったので,利用することにした。このベルトコンペヤは,第5章で活躍することになる。
私は工業高校に勤務するなかで,上記の計測・電気分科会に17年間も所属し,センサ回路,マイコン制御,ポケコン制御など,多くのことを学び,経験を積ませていただいた。この分科会の活動方針は,会員一人一人が回路や装置を製作し,実験をすることによってその理論や動作原理を理解し,わかりやすい教材作りをすることである。本書もこの方針に倣い,プログラマブルコントローラによるメカトロ制御実験のハードウェアとソフトウェアについて,基礎から学ぼうとしている方々に役立つように,以下の点を留意してまとめた。
1.入出力実験ボックスをはじめ,各種の周辺装置はすべて製作することができる。
2.各種の周辺装置で使われる,正転・逆転回路,駆動回路,センサ回路,および各モータの動作原理などは,詳しく解説する。
3.制御実験は,プログラミングコンソールの使い方から始めて,基本回路,応用回路,そして各モータの制御へと,段階を踏む。
4.制御実験には,ラダー図とプログラム(できればタイムチャート)を併記し,回路の動作を箇条書きにする。
本書の特徴は,プログラマブルコントローラの周辺装置を製作し,この周辺装置を用いて制御実験ができることである。このため,プログラムのみならず,周辺装置の動作原理も学ぶことができる。このように,ハード・ソフト両面の技術的なバランスがとれている。この本が,読者の方々の技術力向上に貢献できれば幸いである。
最後に,企画・出敬に至るまで,終始多大な御尽力をいただいた東京電機大学出版局の植村八潮氏,松崎真理氏をはじめ,関係各位に心から御礼を申し上げる次第である。
2001年5月
著者しるす
1 PC入出力装置
1.1 PCの構成と入出力機器の接続
1.2 プログラマブルコントローラCQM1
CQM1のユニット/DC24V入力ユニット(CPUユニット内蔵)/
リレー接点出力ユニット/トランジスタ出力ユニット(16点)
1.3 入出力実験ボックスの製作
入出力実験ボックスの接続図/入力実験ボックスの製作/
出力実験ボックスの製作
1.4 7セグメント表示器の製作
1.5 PCと各種入出力実験装置との接続
2 基本回路のプログラミング
2.1 押しギタンスイッチ/リレーの構造と動作/シーケンス図/自己保持回路
2.2 ラダー図
2.3 プログラムの基礎
基本命令と応用命令/プログラム作成上の注意点/リレー番号
2・4 プログラミングコンソールの使い方
プログラミングコンソールCQMl-PROOlの構成/
CQMlとプログラミングコンソールの接続/
プログラムを入力する前の準備/プログラムの書き込みと訂正/
命令語の挿入と削除
2・5 LD,LD・NOT,AND,AND・NOT,OR,OR・NOT,OUT,END(01)の使用法
直列接続/並列接続/直並列接続(自己保持回路とインタロック回路)
2.6 AND・LD,OR・LDの使用法
並列回路ブロックの直列接続/直列回路ブロックの並列接続
2.7 SET,R8ETの使用法
SET,RSETを使用した自己保持とインタロック
2.8 TIMの使用法
オンディレータイマ/オフディレータイマ
2.9 CNTの使用法
カウンタ
2.10 CNTRの使用法
可逆カウンタ
2.11 SFTの使用法
出力リレーの順次ON-OFF移動
2.12 CMPの使用法
入力加算カウント数の比較
3 応用回路のプログラミング
3.1 出力リレーのON-OFF時間制御
3.2 フリップフロップ回路
3.3 オールタネイト回路
内部補助リレーによる入力信号のパルス化/
DIFU,DIFDを使用した入力信号のパルス化
3.4 フリッカ回路
3.5 タイマ付警報装置
タイマ付警報装置の回路/
ゲートICとディスクリート部品を使用したタイマ付警報装置の製作
3.6 タイマによる順次動作回路
3.7 交通信号機の動作
3.8 MOV,7SEGの使用法
データの転送/7セグメント表示器によるデータの表示
3.9 ADD,SUB,MUL,DIVの使用法
加算(減算)と表示/乗算と表示/除算と表示
4 ベルトコンべヤと周辺装置D>
4.1 ベルトコンべヤ
4.2 単相誘導モータ
誘導モータの動作原理と構造/誘導モータの特性
4.3 単相誘導モータの正転・逆転回路
4.4 ドッグとリミットスイッチ
4.5 パルス発生器
4.6 ソレノイドによる押出し装置
光電スイッチの概要/変調投光回路と受光復調回路
5 ベルトコンベヤを利用した吾種の制御
5.1 ベルトコンべヤ(単相誘導モータ)と人出力実験ボックスとの接続
5.2 ベルトコンべヤの正転・停止・逆転制御
停止押しボタンスイッチ(a接点入力)による停止/
停止押しボタンスイッチ(b接点入力)による停止/
安全な回路の選択/SET,RSETの使用/正転・逆転制御
5.3 ベルトコンべヤの寸動運転
5.4 DIFU,DIFDを使用したベルトコンべヤの寸動運転
5.5 ベルトコンべヤの限時制御
5.6 ベルトコンベヤの繰返し運転制御
5.7 ベルトコンべヤの一時停止制御
リミットスイッチによる一時停止制御/KEEPを使用した一時停止制御
5.8 ベルトコンべヤの回転回数制御
5.9 ベルトコンべヤの正転・逆転回数制御
5.10 ベルトコンベヤの簡易位置決め制御1
5.11 ベルトコンベヤの簡易位置決め制御2
5.12 エスカレータの自動運転
5.13 シャッタの開閉制御
5.15 ベルトコンベヤにおける物体の高低の判別と振り分け
5.16 ベルトコンべヤにおける物体の横幅の判別と振り分け
5.17 7セグメント表示器による生産目標値の減算表示
5.18 ベルトコンべヤの移動速度の測定と表示
6 ステッピンクモータとDCモータの制御
6.1 ハイブリッド型ステッピングモータ
ステッピングモータとその特徴/
2相ステッピングモータの駆動回路と励磁方式/
構造と動作原理/ステッピングモータの特性
6.2 ステッピングモータ駆動一軸制御装置
6.3 PCシステムの設定
6.4 テーブルの右移動と左移動
6.5 マイクロ(リミット)スイッチを利用したテーブルの往復移動
6.6 原点復帰と定位置自動移動
6.7 DCモータ
DCモータの構造と動作原理/DCモータの特徴と特性
6.8 正転・逆転・ブレーキ回路によるDCモータの制御
DCモータの正転・ブレーキ・逆転制御/DCモータの寸動運転
6.9 PWM制御回路によるDCモータの速度制御
DCモータの3段階速度制御/DCモータの多段階速度制御
参考文献
本書で扱った各種装置の入手先
索 引
内容説明
本書の特徴は、プログラマブルコントローラの周辺装置を製作し、この周辺装置を用いて制御実験ができることである。このため、プログラムのみならず、周辺装置の動作原理も学ぶことができる。つまり、ハード・ソフト両面の技術的なバランスがとれているものとなっている。
目次
1 PC入出力装置
2 基本回路のプログラミング
3 応用回路のプログラミング
4 ベルトコンベヤと周辺装置
5 ベルトコンベヤを利用した各種の制御
6 ステッピングモータとDCモータの制御
著者等紹介
鈴木美朗志[スズキミオシ]
関東学院大学工学部第二部電気工学科卒業(1969)。日本大学大学院理工学研究科電気工学専攻修士課程修了(1978)。現在、横須賀市立工業高等学校定時制教諭
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