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ちくま学芸文庫
裁判官と歴史家

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  • サイズ 文庫判/ページ数 287p/高さ 16cm
  • 商品コード 9784480094667
  • NDC分類 327.937
  • Cコード C0122

出版社内容情報

1970年代、左翼闘争の中で起きた謎の殺人事件。冤罪と騒がれるその裁判記録の分析に著者が挑み、歴史家の、裁判官のとるべき態度を鮮やかに示す。

内容説明

1972年、イタリア新左翼運動のさなかにミラーノでひとりの警視が殺害された。事件の黒幕として、16年後に告発されたのは著者の友人、アドリアーノ・ソフリであった。友人の無実を証明すべく立ち上がったギンズブルグが、裁判記録を丹念に読み解きながら、事件の経緯を臨場感あふれる筆致で描きだす。証言、証拠、記録―ともにこれらに向き合いながら、裁判官は、歴史家はそれぞれどういう態度をとるべきなのか。単なる実証主義でも、「歴史=物語」とする相対主義でもない、歴史学の「第三の道」を探りつづけるギンズブルグの方法論が、事件の検証を通して鮮やかに示される。

目次

窓から舞い落ちた死体―十六年後の告発
裁判官と歴史家
予審判事ロンバルディの報告
裁判長ミナーレの追及
殺害指示
歴史学的実験としての裁判
謎の十七日間
憲兵たちの証言
闇に包まれた夜の面談
ヴィンチェンツィ司祭の証言〔ほか〕

著者等紹介

ギンズブルグ,カルロ[ギンズブルグ,カルロ][Ginzburg,Carlo]
1939年生まれ。イタリアの歴史家。ミクロストリア/マイクロヒストリーの創始者。ボローニャ大学教授、カリフォルニア大学ロスアンジェルス校教授、ピサ高等師範学校教授などを歴任

上村忠男[ウエムラタダオ]
1941年生まれ。東京外国語大学名誉教授。思想史家

堤康徳[ツツミヤスノリ]
1958年生まれ。イタリア文学研究者(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

ハチアカデミー

11
C+ 歴史学者ギンズブルグが実際に開かれた裁判について論じる。友人の被告人を救うため、いかにその裁判が欺瞞に満ちているかを暴く。が、本書の主眼は裁判それ事態ではなく、歴史学と法学という学問をめぐる考察にある。目的とする結論があり、それに沿って証言を集め、記録し、それを素材に判決(結論)を下す。歴史家は資料を集め読み解くことで結論を導き出す。その違いを強調するのだが、恐ろしいのは、資料なり証言の限界に目が向けられている点。何を担保に、判決を下すのか、歴史を構築するのか、その限界に触れている。これは諸刃の剣。2012/09/21

ラウリスタ~

10
実際にあった裁判のデタラメさを告発し、高校時代からの友人を助けようとする本。であるだけだったら、日本で文庫化までされるはずもなく、おそらく読者は歴史家と裁判官の真理の見いだし方、あるいはでっち上げ方について読むつもりで読むのだろう。もっとも、そういったことが論文的に書かれているのはほんの数ページであって、大半は裁判の具体的な事項に言及している。イタリアの思想家ってなにやら爆弾とかピストルと縁が深いようだけれども、実際殺害を指示したかどうかは別として、イタリアの司法はなんとまあ。2013/12/12

roughfractus02

8
異端審問を調べる歴史家として、起訴された友人の無実を明らかにしたい欲求も相まって、著者は裁判と歴史の関係の探求を始める。著者は、自然的原因を探求する医学と裁判で発達した説得術を用いる陳述が、歴史ジャンルを古代に誕生させたという。裁判制度が宗教に占有される時代に歴史は事件を裁断する傾向を強め、自然哲学的な原因探求傾向を弱める。また、宗教が弱体化して裁断的傾向が批判される時代には、事実や証拠より徴候を理解する面が強まる(アナール学派)。が、証拠はまだ歴史を自然哲学的に探求する基点となりうる、と著者は主張する。2020/04/11

feodor

6
著者の知友が、16年前の警察官射殺事件の黒幕として裁判にかけられる。その裁判の記録を詳細に見ながら書かれた本。魔女裁判の研究からスタートした著者だけに、現代イタリアの裁判と魔女裁判との近似性から入っていったのだけれども、無実の友人を弁護する本でありながら、もう一方で証拠というものを扱って出来事の経緯を推定する歴史家と裁判官という二つの視点の違いを考察する本でもある。何よりびっくりしたのは1988年の裁判ですら、自白偏重でなんの証拠も顧みないミラノの裁判官たちや、証拠を紛失や破棄して平気な検察の存在。2012/12/05

釈聴音

2
中世の魔女裁判と、現代の刑事裁判が実は全く同じ構造から成り立っていること、裁判官と歴史家が一見よく似た仕事(証拠を調べ、〈事実〉を認定する)に携わりながら実は正反対であること。2012/11/02

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