ちくま学芸文庫
眼の隠喩―視線の現象学

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  • サイズ 文庫判/ページ数 399p/高さ 15cm
  • 商品コード 9784480091888
  • NDC分類 704
  • Cコード C0110

内容説明

見ること、それは「もの」を知覚すること。視線を意識することは「もの」自体にも作用し私たちの認識に影響を及ぼす。例えば我々は道路に描かれた平行線を手がかりに距離を知覚する。これは絵画の遠近法の影響であり、ひいてはこの知覚に基づき街が造られるようになった。本書は視覚的表現や事物と、人間の関係についての考察。あらゆる表現物に刻み込まれた人々の様態を丹念に読み取り、言語化できない無意識な視線を介して世界を見る方法を提示する。またその無意識の世界が、我々の文化の地層を変えていく様相を丹念に語る。思想・美術など幅広い分野に足跡を残す著者の代表作。

目次

1 イメージの交通―象徴と地理的空間
2 人形の家―理性と遊戯性/経験の空間性
3 趣味のユートピア―カタログの両義性
4 視線の政治学―眼の隠喩/視線の破砕
5 ブルジョワジーの肖像―ある時代の神話
6 測定する視線―十九世紀的「知」の断面
7 王の寝台―権力の舞台
8 椅子の身体論―儀礼と快楽
9 メトロポリスの神話学―虚構としての視線

著者等紹介

多木浩二[タキコウジ]
1928年神戸生まれ。東京大学文学部美学美術史学科卒業。元東京造形大学教授、元千葉大学教授。専攻は芸術学、記号論。現代文化の諸問題を多角的に哲学する思想家として知られる(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー

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★★★★★

6
見ることと表象することをめぐる文化史エッセイ。欧米における建築や写真あるいは家具などの分析を通して、文化的に構成されて対象へ投げかけられると同時に対象の現れ方を定める「まなざし」の変遷が考察されています。元ネタはベンヤミンと、なぜかはっきりとは明言されていないけれどフーコーですね。なかなか面白かった。2011/12/12

5
人間の集合的な視線=まなざしが作り出すイメージと、それが人々の世界認識に及ぼす影響(またはその逆)について、旧世界と新世界の対立によって生じたメンタルマップや人形の家、カタログや風景写真、肖像写真、家具や摩天楼など幅広い題材によって考察した本。ある時代の人間がどのような世界を生きていたのかはその時代が「歴史化」してしまわないとわからないのだろうけれど、今僕たちが生きている時代がどのような視線によって構成されているのか考えてしまった。決してわかり易くは無いが素晴らしく示唆的な本。付箋だらけになってしまった。2016/12/26

OKKO (o▽n)v  終活中

3
ゼミの課題本、ゆるゆるやっと通読。最終章「スカイスクレーパー」なんざ非常に難解で何言ってんだかさっぱり。お当番さんの解説に期待 ◆著者は、森山大道や先日亡くなった中平卓馬らとともにPROVOKEの同人であっただけあり、事象を「視線」「まなざし」で斬るその視点の解読は一筋縄ではムリ。次から次にひらひらと展開・転換する論調は、リズミカルな文章に乗って私たちを自由自在に翻弄する。ある程度下地となる教養がないと何がなんだかさっぱりだが、何十回でも食らいつくうちに己の「眼」が鍛えられていくというすごい経験を得た2015/09/15

こうず

2
建築・写真・家具などに対する、時代性に裏付けられた大衆的『視線』の論考。椅子や寝室の章で取り上げられているが、本来、権力の象徴だったものが市民階級の台頭と共に、次第に共有され得る物へと変化していく。権力としての“個”が解体され、人々の集積が産する視線へと変質する過程は一筋縄に理解できなかったが、ある文化の共有には、ある種権威性の消失が関わっているのかもしれない。ひとまず、本文中で取り上げられたバルトに関しても咀嚼する必要がある。2010/10/14

tamaph

1
「おそらくさまざまなメディアの役割はたんに情報を媒介するにない手ではなくそれ自体の形式によって世界を変えていくものだと理解することができる。」この一文につきる。あと、肖像画(ポートレイト)=内的個を表現するもの と 肖像(エフイジイ)=社会的ペルソナを表すもの とを分別し、後者の方が一般大衆に好まれるものだ、というのも、わかりやすい。その違いを日常的に心得ているだけでも、かなりのことが違ってくると思う。2014/10/02

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