ちくま学芸文庫
昭和維新試論

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  • サイズ 文庫判/ページ数 286p/高さ 15cm
  • 商品コード 9784480090645
  • NDC分類 311.21
  • Cコード C0131

内容説明

著者は昭和初期のナショナリズムを軍国主義と一体とみる戦後の進歩思想の流れのなかで、かつて自分をとらえたナショナリズムの意味を考えつづけた。彼は昭和維新思想の起源を、明治の国家主義が帝国主義に転じたとき青年の心に広がった不安と疎外感のなかにみる。この不安を手掛かりに、日々市民に向かって桃太郎主義を訴えた赤児のように純真な渥美勝を始めとして、高山樗牛、石川啄木、北一輝ら、戦後進歩思想が切りすてた不能率かつ温かい心情をもった人々の系譜を掘り下げ、昭和維新思想を近代日本精神史の中に位置づける。

目次

渥美勝のこと
渥美の遺稿「阿呆吉」
「桃太郎主義」の意味
長谷川如是閑の観察
青年層の心理的転位
樗牛と啄木
明治青年の疎外感
戊申詔書
地方改良運動
田沢義鋪のこと
平沼騏一郎と国本社
日本的儒教の流れ
発亥詔書
北一輝の天皇論
国家社会主義の諸形態

著者等紹介

橋川文三[ハシカワブンゾウ]
1922年‐1983年。長崎県生まれ。東京大学法学部卒業。明治大学政経学部教授として近代日本政治思想史を教えるかたわら、戦後冷遇された日本浪曼派の思想をテーマに執筆活動を行う(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー

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筑紫の國造

6
政治思想史研究家の橋川文三による、「昭和維新」の源流を求める論考。橋川は序文で安田財閥の総帥・安田善次郎を暗殺した朝日平吾の話から始める。朝日は一見単なる右翼テロと捉えられがちだが、明治時代の暗殺者と違い、彼には人間である自分がなぜ平等に生きることができないのか、という自我があった。この自我から始まった流れは、やがて昭和維新へと発展する。加えるに、「桃太郎主義」を掲げた渥美勝、あるいは官僚として第二維新に燃えた井上友一など、本書で追求されるのは「昭和維新前史」とでも呼ぶべき精神の総体だろう。2022/07/01

shouyi.

4
100分de名著ファシズムで紹介されていたので読んだ。昭和のファシズムは軍国主義と深く結びつき、良いイメージをもっていなかったので軍国主義礼賛の思想喧伝のものだったらすぐ投げようと警戒して始めた読書だったが、心配する必要がなかった。昭和維新がどのように芽生えどう展開していったかを極めて丁寧に教えてくれた。良い読書となった。2020/01/25

てれまこし

4
戦後の思想史において、思想の現代的意義を決定するのに、戦前の天皇制国家への距離というリトマス試験紙が用いられた。結果として、当時は力をもたなかった思想に日が当る一方、戦前に影響力のあった思想の多くはもはや読まれなくなった。使える思想という観点からはそれでよいが、良い面も悪い面も含めて政治と思想の関係を理解するという観点からは、非常に偏った思想史となっている。それが故に、反動思想への抵抗力も弱まっている。思想「戦犯」たちを外から批判するのでなく、内から理解して乗り越えようとする橋川の仕事が再評価される所以。2019/04/16

Ikkoku-Kan Is Forever..!!

1
丸山眞男「超国家主義の論理と心理」(1946)と橋川文三「昭和超国家主義の諸相」(1964)の関係は、言うまでもなく、「超国家主義」というものへの考察という点において、その方法論から結論に至るまで、ある種の対をなしている。橋川の問題意識は、「必然的」な形で、その『日本浪漫派批判序説』(1957~59)から超国家主義(テロリズムから昭和維新論、世界最終戦争論まで)へと展開するが、『序説』を読めば、まだ圧倒的に丸山の影響下にあることがわかる。『序説』から「諸相」までのこの空白をどう埋めるのか、これが私の疑問。2012/06/21

双海(ふたみ)

0
この分野の研究をやりたいと思っていた頃もありました・・・。2013/05/07

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