出版社内容情報
近世から現在までの欧米の歴史を見なおし、GAFAが君臨し、タックスヘイヴンが隆盛する「金融化社会」に至った道のりと、所得格差拡大について考える。
内容説明
現在も世界で大きくなり続ける所得格差。富める者は富み、そうではないものは貧しくなっていく。どうしてそんな社会になってしまったのか?本書は、ヨーロッパとアメリカを中心に近世から現在に至る歴史を見なおし、大衆消費社会から金融社会への変化と所得格差拡大の関連を見ていく。大衆消費社会により縮まった格差は、社会の「金融化」により拡大し、現在の構造ができあがった。大航海時代からタックスヘイヴン、GAFAの時代までを見通す一冊。
目次
第1章 格差社会の誕生
第2章 消費社会から大衆消費社会へ
第3章 戦後世界の変化
第4章 砂糖の王国からタックスヘイヴンへ―カリブ海域の変質
第5章 金融化する社会
第6章 GDPは正しいか?
著者等紹介
玉木俊明[タマキトシアキ]
1964年、大阪市生まれ。同志社大学大学院文学研究科(文化史学専攻)博士後期課程単位取得退学。現在、京都産業大学経済学部教授。専門は近代ヨーロッパ経済史(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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KAZOO
77
最近の世界の状況を金融という観点から分析したものでわかりやすい気がしました。金融面からみて格差が拡大してきた状況がなぜ起こってきたのかという分析を手始めに、GDPに占める金融部門の比率が高い社会を金融社会と定義しています。また最後に最近の日本の官庁の不祥事とも関連するのですが、GDPの信頼性を疑問視しています。GDPの統計的な指標をもう一度検証していったらいい気もします。2021/12/03
Francis
15
トマ・ピケティの格差拡大の問題意識に触発されつつも、ピケティとは異なる視点から論を展開。工業製品の消費を主とする大量消費社会は多くの国の国民に豊かさをもたらした。しかしまずは英国で早くから帝国化に伴う経済の金融化が進んだ。そしてさらに英国海外領土のタックスヘイブン化、あるいはルクセンブルク、アイルランドのタックスヘイブン化、銀行業務の自由化などにより経済は一層金融化が進み、格差も拡大したとする。これ以上の事態の悪化を防ぐためにGDPから金融手数料などを除外して実態に近づけたFGDPへの移行を主張している。2022/09/17
fseigojp
10
GDPに研究開発費も算定されるようになったのは意外2022/04/14
じゅんぺい
4
第一次産業革命あたりから消費社会→大衆消費社会→金融社会の流れ。イギリス帝国主義がグローバリゼーションをもたらし、ボストン中心の金融化を成し遂げていく。歴史を学ぶとその分野がよくわかる。2022/10/05
転天堂
3
ここ数十年の実体経済と金融経済の乖離については以前からその背景などを知りたいと思っていたが、本書はそれを消費社会→大量消費社会→金融社会への移行という見立てで説明していく。タックスヘイヴンと大英帝国との関連は興味深かった。株価上昇という金融社会で評価される指標にのみ頼ってきた近年の日本経済、実体経済の浮揚につながらないのはこの見立てからも理解できるかもしれない。2022/02/07