ちくま新書<br> 害虫の誕生―虫からみた日本史

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ちくま新書
害虫の誕生―虫からみた日本史

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  • サイズ 新書判/ページ数 217p/高さ 18cm
  • 商品コード 9784480064943
  • NDC分類 486.1
  • Cコード C0245

内容説明

江戸時代、虫は自然発生するものだと考えられていた。そのため害虫による農業への被害はたたりとされ、それを防ぐ方法は田圃にお札を立てるという神頼みだけだった。当時はまだ、いわゆる“害虫”は存在していなかったのだ。しかし、明治、大正、昭和と近代化の過程で、“害虫”は次第に人々の手による排除の対象となっていく。日本において“害虫”がいかにして誕生したかを、科学と社会の両面から考察し、人間と自然の関係を問いなおす手がかりとなる一冊。

目次

第1章 近世日本における「虫」(日本における農業の成立;江戸時代人と「蝗」;虫たちをめぐる自然観)
第2章 明治日本と“害虫”(害虫とたたかう学問;明治政府と応用昆虫学;農民VS明治政府;名和靖と「昆虫思想」)
第3章 病気―植民地統治と近代都市の形成(病気をもたらす虫;植民地統治とマラリア;都市衛生とハエ)
第4章 戦争―「敵」を科学で撃ち倒す(第一次世界大戦と害虫防除;毒ガスと殺虫剤;マラリアとの戦い)

著者等紹介

瀬戸口明久[セトグチアキヒサ]
1975年宮崎県生まれ。京都大学理学部(生物科学)卒業後、同大文学部(科学哲学科学史)卒業。同大大学院文学研究科博士課程修了。現在、大阪市立大学大学院経済学研究科准教授。生命科学と社会の界面に生じる諸問題について、科学技術史と環境史の両面からアプローチしている(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

そうたそ

18
★★★★☆ 害虫の歴史とは、普段なかなか考えてもみない観点かもしれない。それだけに新鮮な驚きに溢れる一冊。害虫といえば殺虫剤というような当たり前の流れは、実はまだまだ歴史が浅いもので、昔の人々は害虫に対してどう向き合っていたか、対策していたかというところが非常に面白みあった部分。また後半での殺虫剤の進歩の歴史については、害虫を殺すためにおこなった科学的な研究が人類を殺戮する毒ガスの発展に結びついてしまうという、やりきれなさの感じられる部分であった。2020/01/18

ちゃま坊

16
人と害虫の戦いの歴史をふりかえる。戦争によって殺虫剤は大きく進化した。これは毒ガス兵器の研究と表裏一体の関係にある。戦地でのマラリアや発疹チフスの被害は戦力を大きく損なう。蚊やシラミ対策に米軍はDDTを使用したが日本軍にはまだなかった。現代では殺虫剤の発達で人の衛生状態はかなり良くなった。しかし外で暮らす猫には今でも蚊やノミやシラミの被害が多い。根絶できない害虫のチャンピオンは蚊とノミかな。2019/08/30

ジュール リブレ

14
ある一つの視点からみる歴史、って、案外面白い。こんかいは、虫、しかも,害虫から見た日本史。。! 江戸時代は、害虫を駆除しようと思ったら暴動が起きてしまった‼ とか。。 こういう話はなかなか知らないけど、でも、歴史はこういうことの積み重ねなんだよね。2012/01/10

イボンヌ

11
4章の戦争と害虫駆除の関係、エピローグにある指摘が素晴らしい。人間中心主義から早急に転換しないといけない点は、環境正義を訴えるグレタ・トゥンベリさんと共通するものがあるかもしれないですね。近代国家のシステムを見直すのと同時に、私の生活も見直さないと。2019/09/29

うえ

8
蝗害について言及のある貴重な書。意外と少ないのだ。日本では定住型農耕と共に虫害が始まり、『続日本紀』には蝗の被害が記されている(但し当時ではイナゴではないらしい)。江戸に至り収穫量が増えると蝗害も増え、1826年に日田の大蔵永常が『除蝗録』を記す。水田に油を散布する駆除法が推奨されている。糟屋郡多田村では彦四郎という農民がウンカを油で駆除する方法を広める。北海道では開拓以前から蝗害の歴史は長く、アイヌの古老が蝗大発生について語り「神罰」とみなしている。そして、明治政府が本格的に蝗たちと対決することになる。2023/06/08

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