内容説明
船中八策は後世に作られたフィクションである。龍馬研究に画期をなす精緻を極めた実証的研究にして、一級の歴史エンタテイメント。
目次
第1章 「船中八策」の物語(龍馬は本当に大政奉還派なのか?;「船中八策」テキストの成立;「船中八策」という名前の誕生;「船中八策」用語の検討;「建議案十一箇条」とは何か)
第2章 土佐勤王党の物語―坂崎紫瀾「汗血千里の駒」(坂崎紫瀾;土佐勤王党三部作を読む)
第3章 瑞山会の物語―瑞山会編「坂本龍馬傳艸稿」(皇后が読んだ龍馬伝;瑞山会「坂本龍馬傳」の成立;「坂本龍馬傳艸稿」を読む)
著者等紹介
知野文哉[チノフミヤ]
1967年生。熊本県出身。早稲田大学教育学部卒業後、(株)東京放送に勤務しラジオ番組の制作などを行う。2010年より(株)TBSテレビ勤務。その傍ら、少年時代からの龍馬好きが高じ、現在、佛教大学通信教育学部修士課程・文学研究科日本史学専攻(青山忠正ゼミ)に在籍し明治維新史の研究にあたる(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
厩戸皇子そっくりおじさん・寺
86
これは圧巻。坂本龍馬の『船中八策』は後世の偽作である事を考証した謎解き。そして日本初の龍馬小説『汗血千里の駒』の真実。史料の検証や坂崎紫瀾の伝記で龍馬伝説が生まれる過程を掘り起こす。龍馬好きには堪らない一冊であった。著者はTBSテレビに勤めており、昔は伊集院光のラジオをやっていた人。小学生時代から龍馬ファンだったという愛が伝わって来る。史実の龍馬の実像から目を逸らさないその愛は素晴らしいと思う。2013/10/14
matsu04
30
いわゆる“ 坂本龍馬ファン ”の多くは、司馬遼太郎の「竜馬がゆく」もしくはそれをなぞったモノから、龍馬を絶対的ヒーローとしてイメージしてしまったのではないかと思われるが、史実は、本書にもあるように全く異なるのである。司馬は自らの小説で龍馬を「竜馬」と呼ぶことで、実在した龍馬そのものではないと弁解したかったようだが、龍馬の実像とは懸け離れた偽りの人物像を、ここまで定着させてしまったことについては大いに反省すべきである。2016/09/04
coldsurgeon
5
坂本龍馬は「希望」である。明治維新前後、可能性のままに実現されることがなかった理想や願望を仮託する形で龍馬伝説は生まれた。この書は、船中八策は龍馬の手によるものでなかったことを示し、龍馬が行ったこと、考えたことをだけをより明確にし、その上で、龍馬を描こうとしたものである。フィクションの「竜馬がゆく」がいつの間にか、歴史書になってしまい、フィクションとノンフィクションとを分けて現実を見つめようとしない現代日本人を、龍馬は「そんなことではいかんぜよ」と、言うだろう。2013/04/17
Sunekosuring
3
虚像と実像の距離が一番よくわからない人物だと思っていたので読んでみたけど、思っていたより遠くはなかった。実像は思想的な先駆者でも特別開明的な人物でもないが、今後も坂本龍馬はさまざまな人の思想や願望を背負わされつづけるのだろう。意外と面白かったのは、龍馬の暗殺者が「謎」とされた理由の考察。なるほど、と思った。2013/07/04
やま
2
地道な考証の積み重ねで史実の坂本龍馬の姿を提示している。丁寧な仕事ぶりに感嘆。2022/05/22