出版社内容情報
チベットの現代作家たちが描く、
現実と非現実が交錯する物語
伝統的な口承文学や、仏教、民間信仰を背景としつつ、
いまチベットに住む人々の生活や世界観が描かれた物語は、
読む者を摩訶不思議な世界に誘う――
時代も、現実と異界も、生と死も、人間/動物/妖怪・鬼・魔物・神の境界も超える、
13の短編を掲載した日本独自のアンソロジー
内容説明
伝統的な口承文学や、仏教、民間信仰を背景としつつ、いまチベットに住む人々の生活や世界観が描かれた物語は、読む者を摩訶不思議な世界に誘う―時代も、現実と異界も、生と死も、人間/動物/妖怪・鬼・魔物・神の境界も越える、13の短編を掲載した日本独自のアンソロジー。チベットの現代作家たちが描く、現実と非現実が交錯する物語。
著者等紹介
星泉[ホシイズミ]
東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所教授。専門はチベット語、チベット文学
三浦順子[ミウラジュンコ]
チベット関連の翻訳家
海老原志穂[エビハラシホ]
日本学術振興会特別研究員(RPD)。専門はチベット語の方言研究、チベット現代文学(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ワッピー
36
読み友さんの感想から。チベット自治区出身の作家のアンソロジー。幻想というタイトルには意味深なニュアンスがあるようにも感じられるが、チベットで好まれる古来からのお化け話をバックボーンに、現代生活に生きる人たちの状況を写し取っています。敵を探す男「人殺し」、ユーモラスな「カタカタカタ」、神の血筋「三代の夢」、迷信と若者「赤髪の怨霊」、古典の続編「屍鬼物語・銃」、かなり意味深な「閻魔への訴え」、金持ちの転生譚「犬になった男」、シュールな「羊のひとりごと」、新体制の下で「1987年の雨合羽」、 ⇒2022/06/17
翠埜もぐら
19
「幻想奇譚」と言うことで期待していたのですが、ちょっと理不尽な小説と言う感じでスカっと肩透かしでした。あとがきに「怪談を娯楽にしてきた日本」と比べ「魔物をよりリアルに恐ろしい存在として意識しているチベット」では怪談は成立しえないとか。確かに「バーチャル」は楽しめるけど「リアル」は「楽しみ」にはならないなぁ。そんな中で「赤髪の怨霊」はリアルを逆手に取って行者をやり込めて、コメディ風味で後味さわやか。他の作品と少し違って楽しかったです。ところで10人の作家さんたちの中に一人も女性がいないのはなんでだろう?2022/09/18
凛風(積ん読消化中)
11
チベットは、多分、馴染みのないアジア筆頭だと思う。中国との関係でニュースでは取り上げられるけれど、人々の暮らしがどんなものなのか、ピンと来ない。そんなチベットの普通の小説も読んだことがないのに、いきなりの「幻想奇談」です。想像と違って、かなり現実的な内容が多かった。「幻想」のイメージは妖しく幽かだけれど、もっとリアルで騒々しい。邪気とか悪魔とか生まれ変わりとか。貧富の差や、都会と地方の格差が激しくて、なかなかにハードな日常が描かれる。訳者が3人なので、翻訳の差も激しかったかな。2022/10/04
ハルト
11
読了:◎ チベット文学の怪異幻想譚。どこか民話的素朴さがある。根底にチベット仏教の帰依が見てとれたりもして、興味深い。悪く云うと説教臭さに繋がるけれど、それが味にもなっていると思う。チベット人たちがこういった物語を好むのだと、身近に思えておもしろい。掌編が多かったのが読みやすかったけれど、短編サイズの話も読んでみたいなと思った。一編一編に解説がついてる親切仕様。2022/08/04
じょうこ
9
短編13話収録。チベット人が小説表現を始めたのは1980年代以降とまえがきにある。どの話も、確かに「幻想」的であり、現代小説とは思えないほど、土と風と月、鬼と霊を感じるお話ばかりなのだ。SNSもスマホも出てこない。電気がどこにも感じられない小説ばかり。日本の現代小説とは大違い。ある意味、本書を読んでいる間は魂が落ち着き、今この時、この地から離れられる。私は「ごみ」(ツェワン・ナムジャ)がいちばんお気に入り。とても映像的、チベットの風景が見えてくる。2023/02/27