出版社内容情報
つねに魂の在処を希求し続けた北欧女流詩人の生涯と作品の全貌。北欧の独特な風土から滲み出る現代人へのメッセージ。
内容説明
真摯に生と死を見つめ、ときに抒情的な、ときに実存的な、ときに謎めいた作品を陸続として紡ぎ上げ、フィンランド・カレリアの地に短くも強烈に燃え尽きた芸術家の全貌。保守的な北欧文壇に反旗を翻し、独自の道を歩むべく、旧態依然の詩形式を打破しつつ、ニーチェ、シュタイナー等との思想的対決を経て培われた詩作・思想の境地とはどのようなものだったか…。
目次
第1部 エーディット・スーデルグラン詩の世界(カレリア詩人の誕生;若き日の遍歴;「私」への旅立ち―処女詩集『詩集』;ロシア革命とニーチェとの出会い―『九月の竪琴』;ハーガル・オルソンある愛のかたち―『薔薇の祭壇』;彷徨する魂―『未来の影』)
第2部 スーデルグラン詩集(処女詩集『詩集』(一九一六年)
『九月の竪琴』(一九一八年)から
『薔薇の祭壇』(一九一九年)から
『未来の影』(一九二〇年)から
遺稿詩集『存在しない国』(一九二五年))
著者等紹介
田辺欧[タナベウタ]
1960年兵庫県生。神戸女学院大学、大阪外国語大学卒業。コペンハーゲン大学・北欧語研究科・第一課程修了。現在大阪大学・言語文化研究科教授。専門は、近・現代北欧文学(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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すむるとろん
1
先生のご著書。今期ゼミはスーデルグランの詩を各人扱うため再読。処女詩集や『存在しない国』はとっつきやすく素直に良いと思う作品が多いが、『九月の竪琴』『薔薇の祭壇』では難解さが増す。詩人自身の人生を見ても、ニーチェに傾倒する頃までは理解可能でも、シュタイナーに入れ込み始める晩年は正直なところついていけない部分が。個人的には<女性>という観点から読みたいが、それを遥かに越えたスケールでの詩作だったよう。やはり短命であったがゆえに汎神論的な境地に達したのかと思う。とりあえず発表頑張る。。。2014/05/21
sachi_0211
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本書では後半半分が詩になっている為か、「どこにもない国」を読んだ時よりも、熾烈なスーデルグランの詩世界を感じた。結核と同じ在処の胸を突き破って、迸る憧れ。内包する世界は、私をどこにもない国へと連れ去ってくれる。孤独に、しかし炎に焦がれて生きた詩人の存在感が、ありありと伝わってくる。2017/11/01