内容説明
1933年来日。深い愛情と透徹した視点で、伝統文化の意味と国民性の本質を見抜いた、世界的建築家による不朽の名著。
目次
敦賀
伊勢神宮
桂離宮
天皇と将軍
生ける伝統
ニューヨーク行か
否―桂離宮を経よ!
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
りー
19
桂離宮の「発見者」と称されるタウト。引用した文章は読んでいたけれど、まるっと読むのは実は初めて。ナチスが台頭したドイツから逃れ、日本へ立ち寄った約3年。建築家としては活躍できなかったけれど、評論は日本人建築家へ強い影響を残した。日本海を渡って敦賀から入国。華美な装飾を嫌い、天皇〉将軍。伊勢神宮〉日光東照宮。急行列車のトイレ、懐石料理がフルコースと違って一度に出てくることなど意外なものにも感動していて面白い。媚びた「日本」ではなく、本質的なものを大切に思ってくれた人で、だから読者が励まされたのだと思った。2020/06/18
重本厚志
1
昭和の初期に日本を訪れたドイツ人建築家の日本論考。桂離宮を日光東照宮よりも高く評価。日本らしい美を表現していると評価。日光東照宮は中国の影響を上手く昇華できていないと評価。 その他新しい建築についても西洋の新しい様式をそのまま取り入れているものについては批判的。上手く取り入れて日本の美として昇華させる努力を行うべきで、日本人はそれができる民族であるとまとめている。 建築に限らず、模倣だけでは底が浅い。上手く自分の型に取り込むことが重要なんだとあらためて感じた。2023/04/18
まふ
0
有名な建築家で日本の芸術の称揚者であるタウトの日本論。日本に対して暖かい愛情から書かれている。しかしながら、モースやハーンのように溺れず、冷静に日本人の伝統を無視するやり方を批判している。最もバランスの取れた見方をする一人であろう。とはいえ、日本人の進むべき道は、近代化されたアメリカ、ヨーロッパ的な道ではなく、もっぱら日本古来の伝統を生かした道であるとするのは、それ自身が良しとされても日本人はそのままでは到底世界の強国に伍して戦うことは出来ないであろう。ある意味ではないものねだり的な注文である。2004/10/25