グノーシス主義の思想―“父”というフィクション

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  • サイズ A5判/ページ数 280p/高さ 20cm
  • 商品コード 9784393332986
  • NDC分類 198
  • Cコード C0014

内容説明

伝統や権威に反逆するもうひとつの“知”のかたちとして、心理学者ユングやポストモダンの思想家など、多くの知識人を魅了してきたグノーシス主義。しかし彼らの理解は、おのれの空想や独善を仮託した蜃気楼にすぎなかった。虚妄の解釈を排して、歴史の流れを大胆につかみ、テキストを細心に読み解くとき、“父なる神”の真の姿を求めて進化したグノーシス主義の発展と崩壊の軌跡がはじめて明らかになる。

目次

第1章 グノーシス主義前史(古代都市の信仰―「父」というフィクション;プラトン主義的形而上学;ストア主義的自然学;混淆主義的変身譚)
第2章 二つのグノーシス神話(『ポイマンドレース』;『ヨハネのアポクリュフォン』)
第3章 鏡の認識(グノーシス主義と精神分析;プレーローマの成立と破綻;奪われた自己像;仮現論―真実の神の変容;新婦の部屋)
第4章 息を吹き込まれた言葉―グノーシス主義とキリスト教(グノーシス主義とキリスト教;神の三つのペルソナ―キリスト教教義の要約;言葉の分裂;真の神の名)

著者等紹介

大田俊寛[オオタトシヒロ]
1974年生。専攻は宗教学。一橋大学社会学部卒業、東京大学大学院人文社会系研究科基礎文化研究専攻宗教学宗教史学専門分野博士課程修了。博士(文学)。現在、埼玉大学非常勤講師(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー

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内島菫

29
グノーシス思想は、キリスト教の枠内でありながらキリスト教の根幹を疑い続けたある意味で倒錯的な思想だと感じた。そして、こうしたグノーシス思想のあり方自体が、キリスト教よりもより人間を探究した証でもあるのではないか。自己の内部の都合の悪いもの(グノーシス思想)を自覚的に葬り、ただ神を信じることを単線的に打ち出すキリスト教は、やはり思想というより宗教という(矛盾やひずみも強引さで押し流せる)あり方を取ったために強大になり得たのだろう。2020/02/13

eirianda

10
図解、神話の要約を用い、柔らかい文章で書かれていた。とはいえ、聖書すらよく知らないので中盤は結構読み進めるのに苦労した。ユング、中沢新一の解釈を一刀両断している。宗教学者として、学問する教義を盲信せず、自らの感情や思想を盛込まず、冷静に史料から読み解こうとする態度に好感を覚えた。グノーシス主義の文献が後期は舌語で綴られていて自滅してしまう…面白いなぁ。「虚構の人格」を中心に人間社会はつくられている、それは今の国家も同じだと…なるほど。グノーシスが出現した時代背景を読んでいると、現代に当て嵌ることも多い。2016/04/25

garth

6
ユングによるグノーシス理解を批判する一方でラカンを持ってくるのはどうなのだろうか。牽強付会という点ではあまり変わらないような……もっと具体的なロマン主義批判が読みたかったのだが、それは別論文でなされているらしい。わかりやすい概説書であり、グノーシス主義の原典が持つという熱を伝えることにも成功しており、やはり原典を読まなければならないのかなあ、という気にさせられた。そういう意味では良書。2011/11/27

もち

4
文章が丁寧で、要点を確認しながら進むのでとても読みやすく感じました。グノーシス主義の本はこれが初めてなので、著者の観点や結論が他の研究者とどれぐらい離れているのか、原典を読んだら自分はどう感じるだろうかというような興味を掻きたてられました。続けて別の著者のグノーシス主義の本を読んでみたくなりました2013/02/18

Walpurgisstrasse666

3
なかなか手厳しく誤解や生半可な理解に関して批判が展開されているが、言われてみれば納得。シンプルな語り口ながら原典から読んでゆく姿勢は見事。2011/06/17

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